スタンフォード大学で受講生たちの行動を次々と激変させたという「奇跡の授業」を書籍化した、『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル著、神崎朗子訳、大和書房)。世界15カ国で刊行され、ニューヨーク・タイムズやタイム誌をはじめとする全米の大手メディアで絶賛された世界的ベストセラーです。

注目すべきは、本書が「意志」の力を根本的に捉えなおしている点。心理学、神経科学、経済学などの最新の科学的成果を盛り込んだ方法論によって、「どうしたら悪い習慣を捨てて健康的な習慣を身につけられるか」「物事をぐずぐずと先延ばしにしないようになれるか」「集中すべき物事を決め、ストレスと上手に付き合うにはどうしたらよいか」が説明されているのです。

今日はその中から、潜在能力を引き出すための3つの力について解説した第1章「やる力、やらない力、望む力」を紹介したいと思います。著者によると、「やる力」「やらない力」「望む力」の3点こそ、私たちがよりよい自分になるために役立つものなのだとか。

できない理由を特定する(37ページより)

困難なことを迫られるときには、「やるべきことはなんなのか」「それを行なうのはなぜ難しいのか」「それを行なうことを考えると、どんな気持ちになるか」を考えるべきだと著者は説きます。

  1. 衝動のままに行動して目先の欲求を満たそうとする
  2. 衝動を抑えて欲求の充足を先に延ばし、長期的な目標に従って行動する

例えば、痩せたいと思う自分がいる一方で、クッキーが食べたくてたまらない自分もいるものです。それこそ意志力の問題で、「もっとも大事なのはなにか」という問題について考え方が異なるだけの話。誘惑に負けてしまう自分が悪いわけではないそうです。

もうひとりの自分に名前をつける(40ページより)

意志力の問題はふたつの自己のせめぎ合いから生じるので、「それぞれがどんな自分なのか」考えてみることが重要。そうすることで、賢い方の自分がどんなことを望んでいるのかがわかるというわけです。

大切なのは、自己コントロールだけでなく「自己認識(自分のしていることを認識するとともに、それを行なう理由を理解する能力)」も重要だということ。自己認識をすれば、行動を起こす前に自分がなにをしそうか予測できるので、よく考えてから行動できるようになるといいます。たとえばタバコをやめたいと思っている人は、自分がタバコを吸いたいと思う瞬間に気づき、どういうときに最も吸いたくなるのかを知る必要があるということです。

そしてここまでの説明が終わった時点で、著者は「意志力の実験」を提案しています。

「選択した瞬間」をふり返る(46ページより)

意志力についてのチャレンジに関して、著者は1日の間に行なったすべての決断を振り返ることを提案しています。そうすることで、自己コントロールを強化できるからだそうです。

5分で脳の力を最大限に引き出す(52ページ)

呼吸に意識を集中するのは効果的な瞑想のテクニック。脳を鍛え、意志力を強化するのに役立つそうです。方法は以下のとおり。

  1. 動かずにじっと座る
  2. 呼吸に意識を集中する
  3. 呼吸している時の感覚をつかみ、気が散りはじめたら意識する


これを実践するだけでも、集中力はおのずと鍛えられそうですね。

本書では潜在能力を確実に引き出すための手段が説明されています。全10章にわたる方法論はまるで10週間の講座を受講するような形で構成されています。実際には学んだポイントを順番に試しながら進んでいくのが効果的だと思います。

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(印南敦史)