もちろんIE 6もちゃんとサポートしています。

あなたが初めて使ったブラウザは何でしたか。私はIE(Internet Explorer)でした。Windowsユーザーであれば、IEには必ず一度は触れたことがあるはず。いまとなっては、chrome、Firefox、Safari...ブラウザもさまざまです。ところが、会社の規定で、あるいはなんとなく、IE6/7/8など、すでにサポートが終わった「レガシーな(古い)IEたち」を使っている方もいるのでは?

さて、この状況に困っているのがウェブのデベロッパー(開発者)たちです。最新のコードを使うとレガシーIEで見られなかったり、テスト環境が多くなりすぎてチェックが追いつかなかったりと、時代が進めば進むほど、デベロッパーの負担が大きくなっていきます。スマートフォンやタブレットなど新たなプラットフォームも増え、さらなる対応を日夜求められています。

「デベロッパーの負担を少しでも減らせないか?」

考えた末に、IEの生みの親であるマイクロソフトは、ひとつのサービスを提供することに決めました。それがウェブサイトチェックツール「modern.IE」。先駆けて英語版をリリースしていましたが、本日4月4日より、日本語版の提供も開始されました

とはいえ、このツールは決してデベロッパーだけのものではないと思います。開発者とやり取りする企業のウェブ担当者、あるいは一人ひとりのユーザーにも使い道があるようです。どのようなことができるのか、早速使ってみましょう。

modern.IEが「なんとかしてよ」を解決しやすくしてくれる

メインの機能は2つ。まずは、最新版IEとの互換性や、多様化するブラウザ環境に適応できるかをチェックする「Webページをスキャンする」機能。もうひとつは、WindowsやMac、あるいはスマートフォンなどでの動作を「仮想環境で検証する」機能です。

「Webページをスキャンする」機能でどこがヘンかの手がかりを得る

たくさんのブラウザやデバイスがあるイマ、デベロッパーは多くのサイトで「ちゃんと見られる」ことを求められています。ところが、サイトの作り方によって「Aのブラウザには使える機能だけれど、Bのブラウザでは対応していない」ということもよくあります。

その最たる問題が、先ほど述べたレガシーIEたちです。最新版のIE 10、ひとつ前のIE 9からは、一部異なる点もあるようですが、基本的には「Web標準」と呼ばれる規格に合うように作られています。この規格は、ザックリ言ってしまうと、「どのような環境にあっても、みんなが同じように見られるようにする」ためのサイト構築のルールみたいなものです。ところが、レガシーIEたちには多くの独自規格が使われているため、最新のWeb標準に対応していないケースがあります。これが「私のPCだと見られないんです」という質問につながる理由のひとつです。

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modern.IEの「Webページをスキャンする」機能で、これらの質問が解決しやすくなるかもしれません。この機能は「レガシーIEでもちゃんと見られるのか(互換性があるのか)」や、「すべてのブラウザやデバイスで正しく動作するのか」といった課題に対して、検証と提案をしてくれます。

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検証したいサイトのURLを入力するとスキャンがはじまります。終えると10項目に分けて結果を表示。問題がある箇所についてはmodern.IEから「改善の提案」があります。10項目が満点であれば言うことナシですが、必ずしも満点である必要はありません。特に9、10番目の項目は「Windows 8への対応」なので、緊急度は下がるといえます。

ただ、このスキャン機能によって「問題がどこにあるのか」という点がわかりやすくなります。もし、あなたがウェブ担当者やユーザーだった場合は、まずmodern.IEでチェックをしてみてはいかが。漠然と「なんとかしてよ」と言うのではなく、自分の動作環境と併せて「modern.IEでこういった改善の提案が出ている」と具体的に伝えれば、開発者は動きやすく(あるいは回答しやすく)なるでしょう。ユーザーであれば、「見ているサイトに問題があるのか、自分のブラウザが対応していないからか」を切り分けるヒントになるはずです。

スタートアップ企業にも嬉しい「仮想環境で検証する」機能

もうひとつの機能である「仮想環境での検証」は開発者向けツール。ブラウザのバージョン違いも問題なら、現在は数多あるプラットフォームの違いも悩みのタネ。PCやスマートフォンを買ってテストするにしても、すべてのバージョンでチェックするのは相当に難しいでしょう。この機能を使えば、各OSやブラウザでの動作をシュミレーションすることで、実機に使い環境でテストができます。

方法は2つ。「クラウドベースでの仮想環境を使う」か、「ローカル環境に仮想マシンを立てる」かです。

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クラウドベースの仮想環境には「BrowserStack」というサービスを使います。上の画像のように、プラットフォームや解像度を切り替えてチェックできます。本来は有料(19ドル/月)ですが、キャンペーン中(2013年4月4日現在)はWindowsの検証機能のみ3カ月間無料で利用できます。その他の環境は30分まで試用可能です。

クラウドにせよローカルにせよ、すべての実機をまかなうのが難しいケース、資金に限りのあるスタートアップ企業や個人開発者には嬉しいサービスではないでしょうか。

このサービスのリリースにあたり、日本マイクロソフト株式会社シニアプロダクトマネージャーの溝口宗太郎さんにお話を伺いました。説明を受けていくうちに、modern.IEの公開には相当の勇気がいったのではないかと感じました。例えば、マイクロソフトの自社サービスがスキャンされ、改善案が見つかれば、誰にもわかりやすい「問題」となってしまうからです。

その点でもmodern.IEは、マイクロソフトなりの「提案」と「決意」なのではないかと思います。クロスブラウザ/プラットフォーム時代において、全体として発展していこう、前に進んでいこうという表れなのではないかと。もちろん、レガシーIEという存在を結果的に「作ってしまった」ことに対するフォローの意味合いもあるでしょう。

modern.IEにはこの他、jQuery Foundationの会長を努めたDave Methvin氏と、Web標準全般を担当するMicrosoftのテクニカル エバンジェリストであるRey Bango氏が執筆した『古いバージョンのIEにも対応しながら、モダンなWebサイトを構築するための20のヒント』というコーナーもあります。デベロッパーには大いに参考になるのでは。

Internet Explorer の検証がより簡単に | modern.IE

長谷川賢人

Photo by Thinkstock/Getty Images and remixed by Kento.