ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』(谷口忠大著、文春新書)というタイトルが言い表しているとおり、著者によって考案された「ビブリオバトル」とは、ひとりひとりが好きな本を持ち寄って書評を展開し合うゲーム。輪読会や読書会と非常に似ていますが、違いがあるとすれば、きちんとした公式ルールが存在しているという点でしょうか。

ビブリオバトルとは?

1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。

2.順番に一人5分間で本を紹介する。

3.それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分行う。

4.全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めた物を『チャンプ本』とする。

(16ページより)

いくつかの補足事項や「発表の様子は動画にとりUSTREAMやYouTubeにアップロードして、あとからでもみんなが見られるようにする」という推奨事項もあるとはいえ、基本的にはとてもシンプル。そしてその機能としては、次の4点が挙げられるそうです。

ビブリオバトルの機能(95ページより)

1.参加者で本の内容を共有できる(書籍情報共有機能)

最大のメリットは、発表者がオススメの本を発表することで、参加者は知らなかった本と出会うことができるということ。また、発表者が他のメンバーに知ってほしい情報を共有することも可能です。

2.スピーチの訓練になる(スピーチ能力向上機能)

ビブリオバトルでは、5分間という短い時間で、原則的に発表資料を準備せず、対面で発表する。こういう機会は日常生活ではあまりないため、スピーチの訓練の場となるといいます。また上下関係のない対等な関係での多数決投票であるため、納得しやすいフィードバックが得られ、スピーチ能力を改善しやすいそうです。

3.いい本が見つかる(良書探索機能)

『チャンプ本』になるためには、できるだけ多くの人に「読んでみたい」と思ってもらえる本を探してきて、内容をしっかり伝えなければならない。そこでおのずと他の参加者が興味を持ってくれる本を紹介する方向に行動が変化していき、結果的にはそのコミュニティにとっての良書が集まるようになるのだとか。

4.お互いの理解が深まる(コミュニティ開発機能)

書評を通じて自分の考えや意見を主張する機会を得ることになるため、発表者の隠れた人となりや個性、知識、背景に関する相互理解が深まるといいます。これが日常会話のきっかけにもなり、またコミュニティ内でビブリオバトルを繰り返すことで、紹介本の傾向やプレゼンテーションのスタイルが、コミュニティの共通認識として育まれるようになるわけです。

つまりは本を通じたコミュニケーションの、より洗練されたスタイルであるということ。プレゼンテーション能力を育むことができるという考え方にも納得できます。そして個人的には、上記の4.にも付随する次の要素がもっとも重要なのではないかと感じました。

本を通した「人となり」との出会い(152ページより)

「本を知る」「本と出会う」ためだけにあるものではない。それがビブリオバトルの特異性。「人を通して本を知る」だけではなく、「本を通して人を知る」場であるというところにこそ、真の魅力と本質があるということです。

同じ言葉や文章を受け取っても解釈する人によって、その文章に見出す意味は全然違う。つまり、本を読むことは実は創造的な活動なのであり、「なぜその本を呼んだのか?」「どういう読み方をしたか?」「どう感じたのか?」とう部分にこそ、解釈者としてのその人の「人となり」「個性」が現れ出るのである。

というわけです。そういう意味では、いまの時代に新たなコミュニケーションの手段としてビブリオバトルが注目されているということには、時代的な必然性があると思えます。

(印南敦史)