月曜日の朝9分ですべてがうまく回りだす』(ジェームス・ロビンス著、上原裕美子訳、日本実業出版社)は、リーダーシップを発揮するためのメソッド「リーダーシップ・プランニング・タイム」について説いた書籍。

このメソッドの中身は簡単。毎週月曜日の朝にしばしの時間をとり、これから1週間にリーダーとして行うべき優先事項について考えるのだ。(中略)リーダーとして部下を支えていくために今週は何をすべきか、それだけに絞って考える時間である。(52ページより)

そして、リーダーが把握すべきポイントとして著者が挙げているのが、次の9つ。これらを各1分ずつ、月曜日の朝に考えれば、チームは機能しはじめるそうです。

1分め 今週、誰にどんな気配りを示せるか?

2分め 今週、誰にフィードバックできるか?

3分め 今週、誰に報酬や評価を与えられるか?

4分め 今週、誰に「もうひとつの給料」を渡せるか?

5分め 今週、誰の自主性を高められるか?

6分め 今週、誰の成長を後押しできるか?

7分め 今週、チームの団結をどのように高められるか?

8分め 今週、どこにちょっとした「楽しみ」を取り入れられるか?

9分め 今週、部下はどんな手本を必要としているか?

「1分め 今週、誰にどんな気配りを示せるか?」に目を向けてみましょう。

信頼をもたらす「三種の神器」とは?

上司に対する信頼が厚ければ厚いほど、会社に対するエンゲージメント(愛着心)も高くなるもの。重要なのは「信頼」が「安全」とイコールであることであり、信頼をもたらす源は次の3つだといいます。

1.キャラクター(性格、人間性)(59ページより)

信頼構築における最も重要な要素がキャラクター。部下は上司のキャラクターから、理念、職業倫理、品位、誠実さの度合いを読み取り、それを手本として受け止めるからだというのがその理由です。

誠実であるというのは、品位があるということ。それはすなわち、信頼できるということだ。

上に立つ者が模範を示すことによる影響力は大きいというわけです。

2.コンピテンス(能力、競争力)(60ページより)

「この上司は部下をしっかり導くコンピテンス(能力)がある」と感じれば、部下は信頼を深めるもの。キャラクターと同じく、コンピテンスは信頼を生む源だということです。

大切なのは、「上司のコンピテンスとは、チームの誰より博識なことではない」ということ。上司としてのコンピテンスは効果的な人材マネジメントとリーダーシップの能力にかかわってくるもので、それは技術的スキルというよりも人間に対する理解力の問題。だからこそ誠実で謙虚な姿勢を守り、自分自身のリーダーシップの成長に務め続けるべきだそうです。

3.ケア(気配り、思いやり、世話)(61ページより)

信頼の三種の神器のなかでも、いちばん軽視されやすいのがケアする力、すなわち気配りや配慮を示す力。なぜならば、働く人が会社に愛着を抱く最大の要因は、「上層部が、私をひとりの人間として認めていると感じる」ことだから。

他人から気配りや配慮を示されると、人はささやかな信頼の気持ちでそれに報いずにはいられなくなるのだとか。「あなたからの影響を受け入れるつもりがあります」と言っているのと同じことだからこそ、これが大きな意味を持つわけです。

このように本書では、リーダーシップを効果的に発揮するためのメソッドがわかりやすく説明されています。部下を持つ人にとっては、なんらかのヒントになるのではないでしょうか。

最後に、この章を締めくくる印象的な一文をご紹介しておきます。

思いやりや気配りのある職場を作るというのは、別に部下の肩を抱くことではないし、じつはあなたが想像しているよりずっと簡単なことなのだ。(63ページより)

(印南敦史)