常に同僚を選べるとは限りませんが、新しく職場に入ってきた人のせいで業務に支障が出たとしたら(それもあなただけでなく、周囲の人みんなが)、あなたには苦情を言う権利があります。

もちろん、あなたのとった行動のせいで、その仕事ができない同僚がクビになるおそれはあります。どれだけ相手が無能でも、それにはちょっとためらいを感じますよね。それに、その人のミスをよく見かけるのは、あなたが携わっている仕事の中心人物だからかもしれません。また、ミスは連発するけれど、それ以外のところで業務に大きく貢献している可能性もあります。

長々と述べましたが、要するに、行動を起こすのは、あくまで広い視野で全体像を見極めてからにしましょう。そこまで考えてみて、どうしてもこの同僚とは一緒にやっていけない、と心の底から思うのなら、話は別です。その場合の対処法をご紹介しましょう。

問題の根本的原因を見極める

仕事が全然できない同僚

その無能な同僚に仕事を教えようとしてきたけれど、どうしても覚えてくれなかったのなら、まずはその理由を探ってみましょう。ただし、「どうして俺の言うことがわからないんだ!?」などと怒鳴るのは禁物です。以下のようなマイルドな表現にとどめておきましょう:

「今までに何度かこの仕事のやりかたを教えたけれど、苦戦しているようだね。こちらの説明を変えたほうがいいのかな? 具体的な説明が足りないのかな?」

問題は相手にある、と決めつけてはいけません。これも全体像をつかむプロセスの一部です。確かに、相手は無能だったり物覚えが悪かったりするのかもしれません。でも、あなたが何度も指示してくることについて、そもそも理解できないのだけれど、そう伝えるとあなたを怒らせそうで怖い、と思っている可能性もあります。

責めるような言葉遣いは控え、相手に説明の機会を与えましょう。あなたは人にものを教えるのが極端に下手くそで、その自覚がないだけなのかもしれません。その場合、相手の言葉が、教えかたを学ぶヒントになるはずです。あるいは、一部のタスクがうまくできなくて、途方に暮れているのかもしれません。この場合は、特に教えてもらいたいところはどこなのかを尋ねて、より密にコミュニケーションをとってみましょう。

もちろん、同僚の教育にたくさんの時間を割く義務はありません。その同僚だって、新しい職場での業務を、ある程度は把握しておくべきです。他人の能力向上を手伝いたいという強い気持ちがあり、時間的にも余裕があるのなら別ですが、そうでなければ、基本的なタスクについて何時間も丁寧に教えてあげることはありません。誰だって本来の業務を抱えているのですから、こうしたことにはなかなか時間を使えません。特に、教えてもどうにもならない相手ならなおさらです。ただ、多少の時間であれば割けるというのなら、苦労している同僚を助けるのも良いでしょう。ひょっとすると、この時の恩を忘れず、あなたに何かあった際に助けてくれる可能性もありますからね。

でも、そんな理想的な結末に至るケースはまれです。その同僚が今までにも仕事を覚えていないのなら、これからも覚えられない可能性が高いでしょう。1週間くらい、問題の見極めに多少のエネルギーを振り向けるのは悪くない手ですが、あまり期待しすぎないようにしましょう

他の同僚の意見を聞く

仕事が全然できない同僚

職場の中で、「頭の悪い」同僚に対応しようとしているのがあなた1人なら、問題を周囲の人たちに知ってもらうようにしましょう。その困った同僚と一緒に働いている人たちが、チームが被る迷惑にだけ目が行っていて、問題の原因に気づいていない場合もあります。周囲の仕事仲間が原因を知らないのなら、きちんと知らせましょう。職場の自分と同等か、少し上の立場の人に、問題の同僚について話をし、状況を判断してもらいましょう。

こうして相談した相手が、特に問題はないと言う場合もあるかもしれません。そういうときは、「困った同僚」と自分との間に個人的な問題があると考え、解決方法を探る必要があります。コミュニケーションがうまく行っていないばかりに、非常に知的な人が間抜けのように見えてしまうことも少なくありませんから。

まずは、問題の同僚とランチに行って、相手を知る努力をしてみましょう。快く思っていない同僚とのランチなんて、いかにもしんどそうですが、相手の行動の裏にあるものを理解するきっかけになるかもしれません。同僚の行動原理を知り、より効果的なコミュニケーションの方法を見つけられる可能性もあります。

一方、相談した相手も、問題の同僚の無能さを認めるような状況なら、あなたには証人が得られたことになります。さらに1つステップを進んで問題を報告する際には、こうした証人が必要になるのです。

管理職や上司、人事部に報告する

仕事が全然できない同僚

人事部にとっては、従業員間の問題を解決するのも業務の一部です。職務を十分に果たせない従業員がいるなら、雇用する側もそのことを知りたいはずです。おそらく雇い主だって、チームの足を引っ張るような従業員に給料なんて払いたくないでしょう。会社側に問題を報告するなら、以下のステップを踏みましょう:

  1. 人事部と面談の約束を取る。
  2. 問題を、できる限り偏りのないように説明する。
  3. 解雇以外で、複数の選択肢を提案する。

これらの項目を押さえたうえで、具体的には、以下のように話すといいでしょう:

「サムとティムと私は、ジャニスのことで困っています。仕事中、彼女は頻繁にミスをするうえに、こちらが教えようとしても耳を傾けてくれません。そのため、業務の質が下がり、遅れがちになっています。チーム内の不満も高まっています。彼女をひどい目に遭わせたいとか、クビにしたいなどとは思っていません。ただ、彼女に何度も仕事を教えたり、たくさんのミスを修正したりするのに無駄な時間を費やすことなく、効率的に仕事をしたいのです。

この問題を友好的に解決する方法を探りたいと思います。例えば、チーム以外の人間にみっちり教育してもらうとか、もっと彼女に合った部署に転任させる、といったことです。もちろん、ほかに人事のみなさんから提案があれば、ぜひうかがいたいです。我々はとても困っていて、どうしたら良いのかわからないのです」

いずれにせよ、人事部に問題を伝える時には、率直さと思いやりを兼ね備えた言い方を心がけてください。怒りに任せるだけでは何の解決にもつながりませんし、場合によっては問題がさらに悪化する危険もあります。

無能な同僚なんてクビになって当然、と腹の底で思っていたとしても、多少の同情心は示しましょう。本当は助ける気なんてなくても、助けたいと思っているフリはしてください。冷淡な態度でいると、相手に非があってもなくても、周囲は、あなたが客観的な問題を指摘しているのではなく、相手への恨みを抱いているのだと捉えてしまいます。どんな要求を出すにしても、自分はあくまで会社や同僚のことを思い、すべての人にとってプラスになる解決策を望んでいるのだ、という態度は崩さないようにすることです。

どうしようもないなら、同僚の愚かさを楽しむ手も

仕事が全然できない同僚

時には、無能で頭の悪い同僚が、そのまま職場に居座り続けることもあります。あるいは、その人を無能だと思っているのがあなた1人、というケースもあるでしょう。いずれにしろ、これまでに挙げた手段を使っても問題を解決できなかった場合は、戦うのをやめて肩の力を抜くしかありません。

いっそ、こうした同僚の愚かさを面白がってみましょう。イライラを笑いに変えるのです。もし同僚でないとすれば、愚かな相手の行動には笑える部分が多いはずです。怒りを募らせる代わりに、彼らの愚かな行動を笑い飛ばすよう、意識的に努力してみましょう。そうすれば、イライラの大部分は発散されるはずです。

もちろん、同僚の愚かな行いのせいで何度も仕事の訂正を余儀なくされるようなら、それは笑いごとではありません。ただ、繰り返し遭遇してきた間違いなら、またあのくだらないミスが来ると予測はできるはずです。だいたいの予想をつけて、訂正にかかる時間をあらかじめ取っておきましょう。結局訂正の必要がなければ、あなたにとってはうれしい驚きです。また、訂正が必要になっても、予定に入れていたタスクがやってきた、というだけのことです。

さらに、あなたに権限があるのなら、その同僚が比較的大きな失敗をせずにこなせる可能性の高いタスクを振るという手もあります。要するに、一緒に働くにはキツい相手でも、距離を取って、なんとかやっていく方法を見つけるしかないのです。そして笑いを忘れずに。愚かさを堪え忍ぶしか方法がないのなら、その状況を楽しんでしまうしかないですよね。

Adam Dachis(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)

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