Getting Things Done、あるいは「GTD」とは、物事を効率よく処理し、生産性を上げるためのシステムです。外から見ると複雑に見えますが、その最終目標はいたってシンプル。「しなければならないこと」をする時間を短縮し、「やりたいこと」をする時間を増やすことです。

今回は、GTDの概要を説明するとともに、GTDをシンプルに導入する方法を紹介します。

GTDとは何か?(Getting Things Doneとは?)

20140422-gtd02.jpg

Getting Things Done(GTD)とは、通常、2つのものを指します。ひとつは生産性メソッドの名前。もうひとつは、生産性コンサルタントであるデビッド・アレン氏のベストセラー本のタイトルです。GTDには長い歴史があり、米Lifehackerを含め、いたるところで生産性マニアたちに熱烈に支持されてきました。とはいえ、米LifehackerであってもまだGTDについて十分に解説できていません。

米Lifehackerでは最近、「101シリーズ」と銘打って、新しい読者のために基本的なライフハックを紹介しています。今回はそのシリーズの一環としてGTDを再度とりあげ、詳しく解説します。

簡単に言えば、GTDとは...

「ToDoタスクや優先事項、スケジュールなどを扱いやすく整理するメソッド」をGTDといいます。GTDの最大の利点のひとつは、「しなければならなこと」の全体像がわかり、「次に何をするか」を選びやすくなることです。

また、GTDではすべてのToDoタスクを頭の外へ追い出し、システムへ移し入れることにも重点が置かれています。頭の中で渦巻いているガラクタを掃除すれば、それだけ効率的に仕事ができます。

いいことばかりに聞こえますが、「GTDは複雑だ」という評判もあります。しかし、実際はそんなことはありません。複雑だという評判がたつ理由は、人々が「適切なやり方」を知らないからです。もちろんGTDにもルールはありますが、「最初にこれをしろ、次にあれをしろ、そしてそれらをこのカテゴリーに入れろ」みたいな厳格なルールはありません。

また、GTDのために特定のアプリや手帳を買う必要もありません。さまざまなメソッドを組み合わせて使うことも可能。とはいえ、自由度の高さゆえに、逆にとっつきにくいのも事実でしょう。この記事では、GTDの基本理念を入門者にもわかりやすく解説します。

GTDの5つのステップ

GTDはひとつの整理体系です。厳密なルールがあるわけではありません。GTDは「しなければならないこと」を収集、整理し、その中から重要なものを選びだすメソッドを提供します。GTDには基本となる「5つステップ」があります。

  1. 収集:ToDoリスト、アイデア、日課などすべてを収集し、ノートに書き出します。アプリやシステム手帳でも構いません。GTDでは特定のツールを強制しません。自分のワークフローに合ったツールを使ってください。ただし、ツールが使いづらいせいで、「あとでリストに記入しよう」とならないように。タスクが発生した時点で速やかに「収集」します。そして、そのタスクを実際にやる時がくるまで頭の中から追い出しておきます。
  2. 明確化:しなければならないことを明らかにします。例えば、「休暇旅行の計画をたてる」では大雑把すぎます。もっと具体的で実行可能なステップに分解してください。また、その場で片付けられるタスクがあったら、その場で片付けてください。誰かに任せられるタスクは、誰かに任せます。こちらの記事の動画で、デビッド・アレン氏がToDoタスクを明確化するやり方を解説しています。この作業をすることで、何をすべきか考える時間を減らし、実行する時間を増やせます。
  3. 整理:実行可能なタスクに分解できたら、こんどはタスクをカテゴリーと優先度で整理します。また、タスクごとに締め切り日を決め、リマインダーをセットします。タスクの優先度は必ず決めておくこと。この段階では、まだタスクの実行はしません。スケジュールを決め、リマインダーをセットするだけです。いわば、ToDoリストや受信トレイ、カレンダーと、こころよくまで触れ合う時間です。
  4. 見直し:ToDoリストを見直します。まず、ToDoタスクを見渡して、「次にやるタスク」を決めます。ここで、「明確化」のステップが活きてきます。すべてのタスクが実行可能なサイズに分解されていきます。どのタスクを選べばいいか悩むときは、タスクの分解が不十分なのかもしれません。もう一度「明確化」の手順を行ってください。また、定期的にToDoリストを見直し、どれだけ進捗したか、優先度に変更がないかをチェック、システムがうまく機能しているか判断してください。
  5. 実行:選んだタスクを実行します。ここまでの手順をきちんと踏んできたなら、タスク選びは難しくありません。すべてのToDoタスクは優先度とカテゴリーで整理されており、どのタスクをいつやるべきかわかっているはず。また、タスクはすべて実行可能なサイズに分解されています。あとは実行するだけです。

以上がGTDの基本原則です。まとめると、GTDは「覚えておかねばならない」ことすべてを頭の中から取り出し、システムへと移し替え、整理し、実行可能なタスクに分解する仕組みです。ここまでしておけば、こんどToDoリストを見た時に、重要なタスクはどれか、いまできるタスクはどれかがすぐに判断できます。つまり、「何をすべきか」や「どうやればいいか」について考える時間を減らし、「実行する」時間を増やせるわけです。

どうやってGTDを始めるか?

20140422-gtd03.jpg

もうあなたはGTDの基礎を理解しています。始めるのは簡単。また、GTDの一部はすでにあなたの日常のワークフローにも含まれています。例えば、すでにToDoアプリを使っていたり、上司との定例ミーティングで優先事項の確認を行っていたりするはず。もしかすると、GTDは大変そうに見えるかもしれません。タスクを実行する時間よりも、タスクを整理するのに時間がかかりそう...。しかし、そんなことはありません。以下、GTDの簡単な始め方を解説します。

1.ツールの選択

まず、アイデアやToDoタスク、そのほか覚えておくべきことのすべてを収集・整理できるツールが必要です。おそらくあなたは何らかのToDoアプリやシステム手帳をすでに使っているでしょう。もし使っていないなら、自分に合ったツールを探してください。例えば、あなたが何かのタスクに取り組んでいるときに、上司が突然新しいタスクを振ってきても、速やかにシステムへ「収集」し、頭の中から追い出せるのが理想です。今使ってるToDoアプリでそれができないなら、別のアプリを探してください。ポストイットやホワイトボードでも構いません。

2.定期的に見直す

毎週、少し時間をとってToDoリスト全体を見直します。最初は毎日やるとよいでしょう。やるべきことの全体像を常に把握しておくのが重要。全体像を知らずに闇雲に作業をしても時間を浪費するだけです。また、優先度を決めておけば、次にどのタスクをやるべきかで悩む必要もありません。基本的に、あるタスクが完了したら、ToDoリストをすばやくチェックし、重要なタスクかつ今すぐできるタスクはどれかを調べ、とりかかるタスクを瞬時に選び出すのが理想です。そしてそれを繰り返すのです。

3.「整理しすぎない」ように気を配る

ToDoタスクをどう整理するかはあなた次第です。ただし、整理のし過ぎは逆効果です。ToDoのカテゴリーが多すぎたり、優先度が細かく分かれすぎていたり、ラベルやフラグが増えすぎていたら、基本に立ち戻って物事をシンプルにしてください。

私はこうやっています

私の場合、毎朝5分間を使って、ToDoリストにその日にやるべきことすべてが書き込まれているかをチェックします。また、すべてのタスクが大きすぎたり曖昧すぎたりせず、実行可能なステップに分解されているかを確認します。それとは別に、週に一度、30分か1時間を使って、ウィークリー・レビューを行います。やる予定だったのにできなかったタスクをフォローしたり、漠然としていたアイデアをToDoリストに加えたり、人に任せられるタスクを誰かに任せたり、小さなブレインストーミングを行ったり、優先度を見直します。

自分に合ったGTDがやりやすいシステムを見つける

20140422-gtd04.jpg

もしかするとあなたは、デビット・アレン氏が高価なシステム手帳を使っているとか、たくさんのToDoアプリを使いこなしていると思っているかもしれません。しかし、実際は違います。アレン氏が使っているのは紙とペンだけです。彼の職場には、アイデアやToDoタスクを素早くメモできるよう、あちこちにメモ帳が置いてあります。メモに書き込んですぐに頭から追い出せるようにです。

紙とペンが好きな人には、以前紹介したBullet Journal system」もかなりGTDフレンドリーなやり方です。この方法なら、ToDoタスクのレビューや優先順位づけにゆっくり時間をかけられます。また、新しいToDoタスクを追加するのも簡単。GTDより仕組みがキッチリしていますが、試す価値はあります。

アプリを使うなら、たくさんの選択肢があります。以前『Evernote』でGTDフレンドリーなシステムを構築する方法を紹介しました。テンプレートをインストールすればすぐに始められます。『Springpad』もGTDフレンドリーなシステムです。『Microsoft OneNote』もパワフルなアプリです。すこし機能が多すぎますが、この3つのどれもGTDにはぴったりのツールです。

必ずしも、EvernoteやOneNoteみたいな多目的なアプリを選ぶ必要はありません。『GQueues』『Doit.im』、Appleのリマインダーアプリなど、シンプルなToDoアプリももちろん使えます。どのToDoアプリやメモツールを選んだとしても、「しなければならないこと」を整理し、優先度を決め、見直すのは可能です。もちろん、使いやすいアプリ、使いづらいアプリの差はあります。GTDのために設計されたツールもあります。いろいろなアプリを試してください。

GTDは基本理念のひとつにすぎない

20140422-gtd05.jpg

GTDは素晴らしいメソッドですが、「基本理念のひとつ」に過ぎないことを忘れないでください。あなたとってベストな生産性システムではない可能性もあります。世の中には生産性を向上させるシステムやメソッドが数多くあります。GTDを聖書のように仰ぐ人たちもいますが、数ある生産性システムのひとつに過ぎないことを忘れないでください。自分のニーズに合わせてシステムを調整するべきで、ルールに縛られすぎてはいけません。自分用にうまくカスタマイズしてください。

例えば、ToDoタスクがメールの形でやってくるなら、受信トレイもシステムの一部となるはずです。受信トレイをクリーンに保つことが、上述の「収集」と「明確化」のステップに該当するでしょう。このGmailのワークフローは、米LifehackerのライターであるMelanie Pinolaが受信トレイを管理するのに使っているものです。同じくGina Trapaniの「Trusted Trio」も優れたメソッドです。受信トレイをクリーンにするだけでなく、「収集」と「明確化」のフェーズもうまく組み込まれています。あなたが学生なら、この学生向けなワークフローを参考に。時間に厳しいタスク(宿題、論文、試験)や、大学生活のコンテクスト(勉強、ノートのまとめ、調査研究)に合わせたタスク管理ができます。とにかく、何をするにしても、自分のニーズに合い、取り組みやすいものを使ってください。生産性のために生産性を追いかけてはいけません

参考資料

ここまで読めば、GTDを始めるとっかかりにはなったはず。とはいえ、まだ表面をひっかいた程度です。もっと詳しいやり方や、具体的なニーズに合わせた方法を知りたいなら、各種の参考資料にあたってください。以下、参考資料リストを載せておきます(すべて英語です)。

GTDの目標は、不必要なことに費やす時間や、非生産的な作業を減らすことにあります。うまくいけば、すべてが整理され、あなたはリラックスできます。次に何をすればいいか、いつやればいいかで悩むこともなくなります。あなたのかわりにシステムが全部やってくれるのですから。ゴールは、あらゆる作業をよりスムーズにこなし、生活をより楽しめるようになることです。

Alan Henry(原文/訳:伊藤貴之)

Title photo made using donatas1205 (Shutterstock), nemo, and Openclips. Other photos by Irish Typepad, David Chico Pham, Teo, and Dennis Hamilton.