相手の意見が間違っていると確信し、何としてでも相手に間違いを認めさせたいときに、試してみたい方法があります。未来のテクノロジーや科学を紹介するサイト「BBC Future」が提案するやり方で、「相手の主張する意見がどんな結果を招くのかを詳しく説明するよう頼む」ことです。人は、ある話題について表面的にしか理解できていない場合でも、何らかの意見を抱くものです。俎上に載っている事がらに関して、論理やメカニズムがまったくわかっていなくても、ひとつの完結した意見を持つべく、頭の中でさっさと結論を出してしまうことが多いのです。
ですから、相手の論拠を切り崩したいのなら、多くの場合、その意見がどんな結果を生み出すのかを詳しく説明するよう頼むのが最善策だと言えるでしょう。
インターネットで募集したアメリカ人たちを相手に、米政府が抱える一連の政策課題について聞き取り調査を実施しました。取り上げたのは、イランへの制裁、健康保険、二酸化炭素排出に関する取り組みなどです。
1つめのグループに対しては、話題について各自の意見を求めた上で、そういう意見を持つに至った理由を尋ねました。このグループは、自分の言い分を述べるチャンスが与えられたわけです。これは、議論やディベートで自分の申し立てを主張する状況と同じです。
2つめのグループに対する聞き取り調査は、若干違いました。このグループは、理由を述べる代わりに、自らが主張する意見がどのようにして成果をあげるのかを説明するよう求められたのです。順を追って一歩一歩、始めから終わりまで、政策立案のもととなる原因から、たどり着くであろう結果までを詳しく述べるよう言われました。
その結果、明らかな違いが現れたのです。理由を求められた1つめのグループは、自分の意見に対する確信が調査前と変わることはありませんでした。一方、説明を求められた2つめのグループは、考え方を軟化させた上、「その問題に関する自分の理解度」に対する評価も、その分大きく下がったと報告しています。
例えば、二酸化炭素排出量取引に関して言えば、賛成であれ反対であれ、もともと強い信念を持っていた人の考え方が穏やかになる傾向が見られました。政策を支持するにせよしないにせよ、確信が揺らいだと感じたようです。
これは一般的に見られる傾向です。もし何かの話題について自分の正しさを人に納得してもらいたかったら、相手の主張する意見がどのようにして成果をあげるのか、詳しく説明するよう頼んでみましょう。その場合は、以前にもお話ししたソクラテス式問答法から始めるのが効果的です。反対に、自分の考えを主張する際は用心したほうが良さそうですね。
The best way to win an argument|BBC Future
Thorin Klosowski(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)
Photo by Guian Bolisay.