『内向型人間のための人生戦略大全』(シルビア・レーケン著、岡本朋子訳、CCCメディアハウス)のテーマは、「2人に1人が当てはまるのに日陰者として扱われることの多い『内向型人間』」。この名称にはネガティブなイメージもありますが、冒頭の「本書によせて」には次のような一文を見つけることができます。
「内向型人間」はたとえば交渉の場で発揮できるすばらしい能力をもっています。ですが彼らの多くは、自分の能力をいつ、どう利用すべきかを知りません。(5ページより)
つまり「内向型人間」は、単に能力を活用できていないだけのこと。そこで本書では、「内向型人間」特有の強みとその活かし方を解説しているわけです。同時に「内向型人間」である本人だけでなく、同僚、パートナー、父親、母親、上司などが彼らとつきあっていくための術も盛り込まれています。
「内向型人間」のためのコミュニケーション法が明らかにされている第2部「プライベートと職場での成功の両方を手に入れる方法」から、第5章「職場でのふるまい方」を見てみましょう。
「内向型人間」のチームワークを成功させる方法
「内向型人間」がチームワークを成功させたいなら、自分の要求だけでなく、同僚の要求も尊重しなければならないと著者。そして次の「同僚とうまくコミュニケーションする方法」を取り入れれば、自分と同僚の要求をうまく調和させることができるといいます。
1.黙々と仕事がしたいときの具体策
あなた自身の要求:ひとり黙々と仕事がしたい
「外向型人間」の同僚の要求:小刻みに仕事をしたい。同僚に相談したり、成果や今後の予定について定期的に話し合ったりしたい。
こうした場合の対処法は、自分と同僚が仕事の仕方を調整できるような、話し合いの場を定期的に持つこと。その際に、ひとりで仕事をしたい時間を主張しておけば、集中して仕事をする時間を確保できるという考え方です。具体策は以下のとおり。
・人より早く出社し、遅く退社する。すると「ひとりでいられる時間」が手に入り、その間に集中的に仕事をすることが可能に。
・ミーティング後はすぐに仕事に戻らず、同僚と個別に仕事の話をする。
・一緒に仕事する同僚と1日の仕事の流れについて話し合う。そして、誰からも邪魔されずに仕事に集中できる時間を確保する。
・自分の仕事を小分けにし、定期的に休息を取る(休憩時間を同僚とコミュニケーションする時間にあてる)。
・仕事に集中しているとき同僚から話しかけられたら、「いま、急ぎの仕事があるから、あとで話そう」と、あとで話す約束をする。
・同僚とはなるべく仕事の話をするようにする。
(137ページより)
2.ちゃんと静かな休憩が取りたいときの具体策
あなた自身の要求:ときどき静かな時間がほしい。
「外向型人間」の同僚の要求:ときどき同僚と話がしたい。
こういう場合は、同僚とコミュニケーションする時間を必ず1日の予定に組み込むことが大切だとか。同様にひとりで仕事したり、休憩したりする時間も忘れずに。具体策は...
・職場は「舞台」だと思うようにする。舞台では演じる必要があるため、ときどき舞台を去って休憩することも必要。
・ときどき同僚とランチを食べる。同僚の話を聞くことが目的なので、大勢ではなく2、3人がベスト。
・研修やイベント中(スピーチや講義中)に休憩を。
・どういうコミュニケーションが求められているのかを探るため、チーム内の「見えないルール」を見つけ出す。そして、できるだけそれに従う。
・あまり大事ではない活動には参加しない勇気を持つ。断っても、エネルギーがあるときに埋め合わせをすればOK。
・楽しいことを自ら企画し、同僚を誘う。
(138ページより)
3.コミュニケーションではなく「仕事がしたい」ときの具体策
あなた自身の要求:人と話すより仕事をしていたい。
「外向型人間」の同僚の要求:コミュニケーションを通して同僚のことをもっと知りたい、成果を確認したい。
この場合の対処法は、同僚と効率よくコミュニケーションをはかること。次の具体策を意識しておくといいそうです。
・同僚とのコミュニケーションに時間を取られたくなければ、自分があげた成果を書面にまとめておく。自信がつくだけでなく、時間があるときに同僚にまとめて伝えられるというわけです。
・会議を大いに活用する。
・自分が高く評価する同僚とは、定期的にコミュニケーションする。
・「内向型人間」のすぐれた観察力と分析力を活かし、同僚が大事にしていること、好きなことを知る。そしてその知識を、同僚との会話に活かす。
・自分のユーモアのセンスを知り、それを周囲の人を引きつけるために利用する。ただし皮肉や嫌味は禁句。
・「内向型人間」は会議やミーティングの要点と結論をまとめることに長けているので、この点によって「外向型」の同僚や上司を積極的に助ける。
・チーム内での自分の任務を自覚し、同僚と正しくコミュニケーションをはかることに努める。自分の担当分野の成果は責任を持って同僚に報告し、「自分がやるべきこと」を自覚して行動する。うまくいかない場合は同僚に相談。
・コミュニケーションの目的を常に意識する。同僚に注意するのは避難するためではなく、問題の解決策を見つけるためだと自覚する。
・チームワークが成功したら、その都度みんなでお祝いする。ポジティブな感情を分かち合い、盛り上げ、成功を目に見えるかたちで喜ぶ。
(139ページより)
「内的思考人間のため」というアプローチがユニークですが、解説もこのように具体的。だからこそ、「外向型人間」とのコミュニケーションに悩んでいる人には、大きな助けになってくれるはずです。
(印南敦史)