何かを決意し、最初の一歩を踏み出し行動する人は、実は少ないです。

そして、行動を始めること以上に、「やり続けることが難しい」と感じている人はとても多いのではないでしょうか。

(中略)

行動することは何よりも大切です。

そして、それを何かしらの「結果」につなげるためには、「行動を続けられるかどうか」が重要なのです。逆にいえば、結果が出るまで続けさえすれば、あなたが望むことは実現できます。(「はじめに」より)

このように主張するのは、『「続けられない自分」を変える本』(大平信孝著、フォレスト出版)の著者。とはいっても、「わかっていても続けられない」という現実はたしかにあるはず。そこで本書では、「続けられない自分」を「続けられる自分」に変える方法を公開しているわけです。

その根底にあるのは、「エモーショナルハビット」というメソッド。それはアドラー心理学をベースにしたセルフフコーチングメソッドで、行動を習慣に変えるシンプルかつパワフルな方法なのだそうです。そこで、第2章「続けられる自分になる『エモーショナルハビット』」から要点を引き出してみたいと思います。

続けられない3つの原因

私たちが続かない・習慣化できない原因は、3つしかないのだと著者はいいます。

1. 本当は続けたいと思っていない

ひとつ目は、そもそも自分にとって重要ではなかった、自分には必要のない習慣だった場合。英語の勉強にしてもダイエットにしても、本当にやりたいものではないと、挫折する可能性が高いということ。つまり「続けられる自分」になるためには、本当にやりたいこと・続けたいことだけを選ぶ必要があるという考え方。

2. 自分には続けられないと思い込んでいる

「どうせ自分は続けられない」「自分には無理」と思っていると、なかなか続けられないもの。「結果や実績がないと自信が持てない」という人もいますが、「どうせ自分にはできない」という状態で行動すると、「できない」という結果を引き寄せてしまうことになるわけです。

やると決めたのに「できない」と考えるのは、行きたい方向とハンドルの向きが一致していないようなもの。しかし、行きたくない方向ではなく、行きたい方向に意識を向けると、結果は必ずついてくると著者は断言しています。

3. 行動するときに「面倒くさい」「続けるのが難しい」と感じている

3つ目は、行動するときに「面倒くさい」と感じたり、実際に続けることが難しくて続かない場合。しかしそれでは、行動するのはもちろん、続けることも難しくなって当然です。つまりは行動したり、行動を続けたりするハードルが高く、実行が億劫になってしまっているパターン。

なにをやっても続けられない人は、必ずこれら3つのどれかにあてはまるそうです。では、原因を乗り越え、「続けられる自分」になるためにはどうすればいいのでしょうか?(40ページより)

3つの原因を乗り越える方法

まず「1. 本当は続けたいと思っていないから続けられない」を乗り越えるためには、「続けたいことを見極める」ことが大切。「心底やりたい!」と思ったこと、自分の人生にとって重要で大切なことだけを選び、「習慣化」に取り組めばいいということ。あらかじめシミュレーションすることによって、「本当に続けたいこと」に取り組めるようになるというわけで、これを著者は「キーハビット」と呼んでいます。

キーハビットとは、人生で本当に成し遂げたいことのための習慣。本当に続けたいこと、続ける必要があるかを見極めてから習慣化することが大切だということですが、これには理由があるそうです。プラスになりそうなことであればなんでもいいから続けたいと思う人もいるかもしれませんが、手当たり次第に習慣化しようとしてもうまくいかないのだそうです。だからこそ、本当にやりたいこと、実現したいことに近づく習慣がキーハビットになるということ。

次の「2. 自分には続けられないと思い込んでいるから続けられない」を乗り越えるには、「前提を変える・ゴールから逆算する」ことが重要。「もし◯◯を当たり前のようにできるとしたら?」と考え、できた未来を先に味わうことで、無力感をなくすことができるのだとか。

「特別なチャレンジで、大変なことだ」と思い込んでいると動けなくなってしまいますが、「当然できる!」と思っていれば、続けることが「苦しい、難しい、できない」という概念が生まれることはないはず。「続けられる人」になるためには、うまくいってもいかなくても、感情を消耗させない、無駄遣いしないことが大切だという考え方です。

そして最後の「3. 行動するときに、『面倒くさい』『続けるのが難しい』と感じている」を乗り越えるには、面倒くさい、難しいと思えないくらい、簡単なことからはじめることが大切だといいます。(45ページより)

「続けられる自分」になる3つのステップ

さて、ここで登場するのが、先述した「エモーショナルハビット」。「最初の一歩の行動」を「習慣」に変えるための方法を体系化したもので、簡単にいえば、次の3ステップで行うのだといいます。

【ステップ1】習慣化シートを作成する

【ステップ2】朝50秒、習慣化シートを見て、「味わいたい!」と思う場面での、頭の声、体の声、心の声を聞き、その状況を味わう

【ステップ3】朝、10秒アクションをする

(49ページより)

このステップを実行するだけで、これまで続けられなかったことを、飽きたりつらいと感じることなく続けられるようになるのだそうです。具体的には、50秒「味わう」と本当に続けたいことなのかを確認できるので、「1. 本当は続けたいと思っていないから続けられない」の対策になるのだとか。

また、続けられた未来の自分から逆算できるので、「2. 自分には続けられないと思い込んでいるから続けられない」の対策にも。そして10秒アクションからはじめることで「面倒くさい」「難しくて続かない」ということがなくなるため、「3. 行動するときに、『面倒くさい』『続けるのが難しい』と感じている」への対策にもなるわけです。(49ページより)

感情のゴールを設定する「習慣化シート」

習慣化シートとは、感情のゴールを設定するために著者がつくった特別なシートのこと。数値目標を設定するのではなく、感情のゴールを設定すると、「感情のゴール」が具体的になっていきます。するとそれが自分自身を強烈にリードし、自然と「行動」が続いていくというわけです。

「味わいたい!」と願う「感情のゴール」、逆に「味わいたくない!」と願う「感情」。これらを1枚の紙に整理するためにつくられたシート。なお、本書の巻末特典からダウンロードして使えるようになっています。(51ページより)

100%行動できる10秒アクション

では、10秒アクションとはなんでしょうか? これは文字どおり、まず10秒でできる行動をすること。本書では習慣化シートを使用し、50秒間味わった感情や場面につながる、すぐにできる1アクションを10秒間で行うようになっているそうです。ちなみになぜ「10秒アクション」なのかといえば、それは行動しない理由や言い訳をつぶせるから。

面倒くさい、しんどい、難しくてできない、時間がないからできない、自信がないからできない、お金がないからできない、ちゃんとできそうにないからやらない、続けられそうにないからやらない、ちゃんと準備できていないからやらない、失敗したらどうしようと思うと不安でできない、などと感じる場合でも、人は10秒なら行動できるということ。(56ページより)


こうした基本的な考え方に基づいて、以後の章ではエモーショナルハビットを実践していけるようになっています。図版も豊富で解説もわかりやすいので、「続けられる」ようになるための習慣を身につけられる可能性があります。現状を乗り越えたいと思っている人は、ぜひ手にとってみてください。

(印南敦史)