ライフ

災害用の備蓄 「3日分」が「1週間分以上」に変わった理由

 これまで災害用の備蓄は、3日分が適量といわれてきた。だが、今年5月、南海トラフ巨大地震の対策を検討する国の有識者会議は、「家庭用備蓄は“1週間分以上”の確保が必要」と発表した。なぜ1週間分が必要に変わったのか。防災啓発活動などを行う『NPO法人プラス・アーツ』理事長の永田宏和さんがこう説明する。

「南海トラフ地震のエリアは広く、被害の規模はかなり大きくなると想定されています。つまり、助けなければならない人の数は莫大に増えるのに、助けに行ける人は圧倒的に少ない。首都直下地震の場合も、エリアは小さいですが、人工密度が高いため、救援がすぐには来ない可能性が高い。だから、せめて1週間、自力で生き延びる必要があるのです」

 となると、備蓄品をもっと増やさねば!と思いがちだが、それは大きな間違いだ。

「1週間といっても、傷みやすい冷蔵庫の中の食材から少しずつ食べていけば、最初の3日間程度は過ごせます。あとの4日分を備蓄しておけばいいのです」(永田さん)

 そこで、3人家族が4日間生き延びるために必要な備蓄品だが、昨年よりローリングストック(備蓄した食品を食べ、減った分を足していく方法)を提案している食品メーカーの『テーブルマーク』の資料によると“おかずになる缶詰12食”や“パックご飯24食”、“2リットルペットボトルの水18本”、“インスタントラーメン12食”などが必要。さらには、おやつ用缶詰や日持ちする野菜、乾物、調味料なども必要だ。

「災害に遭って大変なときにおいしくない備蓄品ばかりでは、気分が落ち込み元気も出ません。だからこそ、普段の食事にも乾物や缶詰などを使って、慣れておきましょう」

 と言うのは、『がんばらなくても大丈夫 台所防災術』(農文協)などの著者で、料理研究家の坂本廣子さん。

 坂本さん自身、1995年の阪神・淡路大震災を神戸市内の自宅で経験しており、その言葉には説得力がある。

「あのとき、避難所に入れた人はほんのひとにぎり。つまり、南海トラフのような大規模な地震や、首都直下のような人口密集地の災害であれば、全員が避難所に入ることはほぼ不可能。そして配給はないと思え、ですね。神戸のように局地的な災害でも、おにぎりが配られたのは1週間後。だから今後、大災害に遭ったときに自前の食材がなければ、餓死する可能性も」(坂本さん・以下同)

 坂本さんが提唱する災害時の基本的な考え方は“日常”だ。

「復興とは日常を取り戻すのが目的です。防災用ストック食材は、普段は絶対に食べない乾パンなどが一般的ですが、新ローリングストックは日常生活をベースに災害時の食を考えること。麺類や乾物、缶詰、カップ麺など、食べ慣れていて日持ちのする食材を、最低でも今家にあるものの倍、キッチンに用意しましょう」

 以前の日本では当たり前だった食材の買い置き。だが、今はそれを避ける傾向にあるのが、防災対策の泣きどころだと前出の永田さんは言う。

「夜中でもコンビニで買い物ができるので、買い置きをしない人が増えています。でも、災害時にはそれらが機能しない。だから、今の日本にこそストックは必須なんです」

※女性セブン2013年9月19日号

関連記事

トピックス

1月7日放送の『ザ!世界仰天ニュース』では中居正広の出演シーンが全カットされていた(番組公式HPより)
《高視聴率記録》中居正広出演シーン全カットの日テレ『仰天ニュース』、“MC不在”の4時間に編集した制作サイドに業界内で上がる「すごすぎ」の声
NEWSポストセブン
元「ANZEN漫才」のみやぞん(Instagramより)
《5500万円のロールス・ロイスを買いたい》みやぞんが“金持ちキャラ”に激変 「ANZEN漫才」解散後の相方は月収は850円で「広がる格差」
NEWSポストセブン
フジテレビ
フジテレビ・木下康太郎アナが電撃退社していた、1年前から米国留学中も新たな道へ 局も「退社は事実」と回答
NEWSポストセブン
来る3月、大谷翔平が日本に凱旋
大谷翔平、日テレが生中継する開幕前の壮行試合に“出場拒否”の可能性 依然として尾を引く「新居報道騒動」
女性セブン
けがの前と変わらない立ち姿を披露された美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/JMPA)
美智子さま「杖をつかずに一般参賀に参加」の目標を見事に実現 宮内庁病院は看護師2名の追加採用を決定、“快復のカギ”となるか
女性セブン
450日以上にわたって拘束され続けているリリー・アルバグさん(イスラエル大使館の公式Xより)
《停戦合意を前に19歳女性の人質動画を公開》ハマスが450日にわたり拉致・監禁「性奴隷」と呼ばれ…深刻な肉体的苦痛の実態「もう私たちが知っている彼女ではない…」
NEWSポストセブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
「田原俊彦、植草克秀を収録済み」中居正広『だれかtoなかい』が早期打ち切り危機…空白埋める「毒舌フリーアナ」
NEWSポストセブン
秋篠宮ご一家の動向が注目されている(写真提供/宮内庁)
【原武史氏×河西秀哉氏が見通す2025年の皇室】悠仁さま、愛子さま、佳子さまに重大岐路 皇室改革がなければ「秋篠宮家」一家丸ごと皇籍離脱の可能性も
週刊ポスト
中居正広の女性トラブルに全く触れないテレビ局 
中居正広の深刻トラブルに全く触れないテレビ局 ジャニー氏性加害問題で反省したはずなのに…騒動が風化するのをじっと待つ“不誠実”
女性セブン
2024年12月13日の事始め式では青いストールを巻いて現れた
《六代目山口組・司組長のファッションに注目集まる》原点は「チョイワル」コーディネート、海外高級ブランドを外商で取り寄せ、サングラスは複数用意して全身グッチ
NEWSポストセブン
新年一般参賀では、午前と午後合わせて5回、宮殿のベランダに立たれた(2025年1月、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)
一筋縄ではいかない愛子さまの結婚問題 お相手候補に旧宮家の男系男子を推す声がある一方、天皇陛下が望まれるのは“自然に惹かれ合った形で”
女性セブン
乗客乗員181人のうち179人が死亡するという韓国の旅客機事故で最大の被害となった
韓国機事故で179名が死亡、2人の生存者が座っていた“生還しやすい座席” 相対的には「前方より後方」「窓側より通路側」「非常口付近」
女性セブン