最新記事

イタリア

ベルルスコーニの後継者は娘で決まり!

人懐こさと存在感は父親譲り。父のメディア帝国だけでなく、政治基盤も継ぐ資格は十分だが

2013年8月20日(火)15時40分
バービー・ラッツァ・ナドー(ローマ)

政治の名門 イタリアにも「ケネディ家」や「ブッシュ家」があっていい  Pier Marco Tacca/Getty Images

 イタリアの首相を3期務めたシルビオ・ベルルスコーニも、ついに政治家人生のたそがれ時を迎えているのかもしれない。脱税や未成年者買春で有罪判決を受け、公職から締め出されようとしているのだから。

 だが舞台袖では「もう1人のベルルスコーニ」が出番を待っている。長女のマリーナ(46)だ。イタリアでいま最も影響力のある女性と言われ、フォーブス誌の「世界で最も影響力のある女性トップ100」にも選ばれた。父親が一代で築いたメディア帝国の継承者となることが確実視されており、政治家としての看板も引き継ぐことになるかもしれない。

 マリーナの実業家としての手腕は証明済みだ。父親の企業グループ「フィニンベスト」やその傘下の出版社「モンダドーリ」を堅実な経営で舵取りし、イタリアの経済危機を乗り切ってきた。

 人懐こさと存在感は父親譲り。バレエダンサーである夫とのなれ初めがそれを物語る。スカラ座の舞台に立つ彼を見初めるとコネを使って楽屋に押し掛け、見事に射止めた。夫妻には2人の子供がいる。

 父親と違うのは、少し控えめなところだろう。政界進出への意欲を質問されても「どうかしら」と遠慮がちだ。

 それでもマリーナ待望論は鳴りやまない。「立ち居振る舞いや意志の強さからみても後継者は彼女しかいない」と、ベルルスコーニ家と親しいルイジ・ビジニャーニは先月ラジオで発言。「アメリカの政界にはブッシュ家やケネディ家のような名門がある。イタリアにもあっていいはずだ」

 そうかもしれない。76歳のベルルスコーニが公職を追放されるにせよ引退するにせよ、マリーナほどの影響力のある人物なら父親が率いる中道右派政党の後継者問題を解決できそうだ。

 ベルルスコーニは最近、党の「若返り」計画を示唆している。政界入りした20年以上前の勢いをよみがえらせるために、党名を現在の自由国民党から、結党当時のフォルツァ・イタリアに戻すつもりだ。彼のフェイスブックによれば、若い世代を重視し、共に歩みたいからという。

 マリーナは「運命の申し子」なのか。そう信じて疑わない自由国民党のダニエラ・サンタンケ議員は断言する。「父親の政党、そしてこの国を引き継ぐのはマリーナしかいない」

[2013年8月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ・加・中、関税阻止できず 2月1日発動へ=

ビジネス

FRB元顧問を逮捕・起訴、経済スパイ共謀罪 中国に

ワールド

米、ヘリのブラックボックスも回収 首都空港付近のヘ

ワールド

ベネズエラ、米国人6人解放 マドゥロ大統領と米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    またか...アメリカの戦闘機「F-35」が制御不能に「パ…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 8
    幼い子供には「恐ろしすぎる」かも? アニメ映画『野…
  • 9
    ロシア石油施設・ミサイル倉庫に、ウクライナ軍がド…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 6
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中