@ぴあTOP > インタビュー > 中田ヤスタカ(capsule)
エレクトロ/テクノ/ハウスのコアなバックグラウンドを持ちながら、Perfume、MEG、鈴木亜美などの人気ポップ・アーティストのプロデュースや楽曲提供でも注目を集める中田ヤスタカ。自らのユニット、capsuleのニュー・アルバム『MORE! MORE! MORE!』を完成させたばかりの彼の<クリエイター魂>を探る!
Text●早川加奈子 Photo●三浦孝明
――作曲し始めたのは10歳頃からだとか。
「小さい頃からピアノを習ってたんですけど、最初は自分がピアノで弾く曲を作るために紙に譜面を書いていて。それをラジカセで録音し始めたら、“録る”ってこと自体が楽しくなっていったんです」
――で、16歳でヤマハのコンテストでテクニック賞を獲得するんですよね。
「賞金が欲しかったんです(笑)。サンプラーが欲しくて。応募した作品もそんな感じで何十分とかで作って。でもゲットしたのは10万円相当のヤマハ製楽器でした(笑)」
――当時好きだったアーティストというと?
「いなかったですね。当時、たまたま近所のCDショップがアナログ専門のフロアもあったりするようなインポート専門店で、あの頃いっぱい出てた安い輸入盤のテクノのコンピとか、いろいろ聴いてましたけど。自分の曲を作るためにテンションを上げるきっかけ、みたいな感じで聴いてたかもしんないですね」
――そういう、サウンド志向の中田さんが<ポップス>を作ろうと思ったきっかけは?
「今でも“歌”を作ってるつもりはないんです。シンガー・ソングライターでもないですし。<声が入ってる音楽>って感じ。言葉も素材というより<楽器>かな? ギターやドラムやストリングスも楽器なら、歌も楽器でいいじゃんって思うから。歌にして伝えたい何かっていうものはないんですよ。歌という要素、そういう種類の楽器が曲によって必要なだけで」
――例えば、Perfumeをプロデュースする時もそういう感覚なんですか?
「Perfumeが話題になり始めた頃、アイドルなのにこんな音楽をやっててすごいね、みたいに言われたんですけど、音楽自体はさほどとんがってないと思うんです、僕は。セレクトショップではなくデパートで売ってるレベルの奇抜な服、みたいな(笑)。完璧に自分のエリアじゃない側の人をターゲットにしてるからこそ、変で面白いんじゃないかなって思ってたので。例えば、僕がモロにクラブ系の人としかやらなかったら、きっかけが減ると思うんです。(Perfumeのファンが)そこからどう行くかはわかんないけど、何かのきっかけになればなっていう思いはありますね」
――自らのユニットであるcapsuleに関してはどんな視点で取り組んでいるんですか?
「純粋な意味で僕が“プロデュース”してるのはcapsuleだけだし、自分が100%こういうものがカッコいいと思うものはその中でやれればいいっていうか。まぁ、capsuleをやってる時がいちばん楽しいですね。今回のニュー・アルバム『MORE! MORE! MORE!』も、やっとcapsuleが作れると思ってすごい楽しく作ったんですけど。ただ、僕は自分のことを“作り手”だと思ってるんで、PVとかも本当は出たくないんですよね。例えばこういうインタビューも、“今日はあのお店のパティシエに聞いてみました”みたいな出方でいいかなって(笑)。音楽番組とかでひな壇にばーっと並んでる人を見てると、どうしても同業者に思えないというか。そういうところに出てる人に曲を作ろう、とは思うんですけどね」
――どうしてもボーカルにスポットがあたりがちですもんね、ポップスの世界では。
「僕はcapsuleっていうものがあるから、いちクリエイターの人よりは名前が知られてるかもしれないけど、一般的にはモノを作る人よりも表に立ってる人にしか注目しないっていうか。映画業界では監督やプロデューサーも大事に扱われるのに、音楽業界ではなんで作曲家は下請けなんだろうって。ボーカリストは、その曲がどういうところで生まれた曲なのかを知らなかったりもする。それなのに出来た曲について語ったりしているのを見て、“ちげーよ!”って作曲家は思ってるかもしれないじゃないですか(一同爆笑)。こういう考え方って音楽業界では浮いてるかもしれないけど、僕みたいな人がもっといてもいいんじゃないかな、って思うんです」
――そういう生粋のクリエイター気質である中田さんが今のJポップ界で大ヒットを飛ばしている、という現状が面白いですよね。
「ヒットは……なんでだろう(笑)。なんでみんな欲しくなるのか、自分ではわかんないんですけどね。面白いと思って作ってはいるんですけど、そこまでヒットを狙ってたわけでもなくて。自分で、“これ最高!”って思う気持ちと、“大丈夫かな?”って思う気持ちが、どっちもすごいマックスにある感じのことしかやってないんで、“絶対コレはイケる”とは思わないですね。だから良かったですよね、聴いてくれてる人はちゃんと聴いてくれてるんだなってことがわかって。勘違いとかムリヤリじゃなくて、ちゃんと面白がってもらえてるんだなってとこが、いいなって思いますけど」
――それって、半歩先の音をポップスとして落とし込めてるっていうことなんですかね?
「半歩先じゃなく“今”好きなことやってるだけなんですけどね、僕は。次にこれがクるってことをやってるDJは、僕のイベント(『FLASH!!!』)のDJのヤツでひとりいるんですけど。早過ぎる(一同爆笑)。ただ僕は、今見えてるものをやるんじゃなく、想像した時に面白くなりそうなものを“今”やりたいんです。だから本当は、作った次の日にCDを出したいんですけどね(笑)」