ミロクローゼ ミロクローゼ

映画『ミロクローゼ』石橋義正監督インタビュー

パフォーマンスグループ「キュピキュピ」やテレビ番組「バミリオン・プレジャー・ナイト」など、舞台・アート・映画とボーダレスに活躍する石橋義正監督が映画としては02年以来となる最新作『ミロクローゼ』を発表。山田孝之が一人三役に挑戦し、海外の映画祭でも称賛を浴びた本作について監督にお話を伺った。

Q:本作の構想に6年の歳月を掛けたと伺いましたが、そもそも『ミロクローゼ』を作るきっかけはどんなところから?

A:最近は原作もの、特に漫画の映画化であるとか、テレビ番組の映画化というのがどうしても多くなってきていて、映画そのものとして成立する企画が非常に少なくなっていると思うんです。僕自身、子供のころから映画がすごく好きでこの世界に入ったので、何とかその状況を変えていきたいという思いがありまして。その夢を捨てずに映画から何か発信していくような形をとりたいなと。

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Q:確かに最近は原作ありきの映画が多いですよね。

A:全体的にその流れが強いですね。それ自体は別にダメではないんですけど、例えば漫画だったら漫画の方がやっぱり面白かったりするわけで、映画を作る意味というのが商業的な意味以外に感じられないというか。商業的に成功させるという意味では、映画から発信させて次の展開にできるようなものになればベストだなと思いますし、それは作り手がそういう動きをしていかないと何も変わっていかないなという気持ちもありまして。

Q:その点では本作はいろんな展開が考えられますね。美女に恋をする子供のような外見のオブレネリ ブレネリギャー、草食系男子の悩みを一刀両断する青春相談員・熊谷ベッソン、さらわれた恋人を探す浪人・多聞とそれぞれのキャラクターがすごく個性的で。

A:いろんなスピンオフができるんですよね。例えばオブレネリ ブレネリギャーのパートは絵本から抜け出したようなお話にしているんですけど、これで絵本を作りたいなという気持ちもあったりとか、熊谷ベッソンの場合だとラジオ番組でお悩み解決のコーナーを作ったら面白いなとか思ったり(笑)。

Q:女性からすると愛する人を探して彷徨う切ない雰囲気がとても色気があって、多聞に魅力を感じる人は多いと思います。多聞のスピンオフについては?

A:多聞だけで恋人を探し求めていく一つのドラマとして作ることはできるなと思ってます。

Q:ぜひそのドラマも観てみたいです!ところでこの3つの物語はそもそもどこから作り始めていったのですか?

A:最初は断片的なイメージがいくつかありまして、例えば絵本のようなお話を映像化したいというので、ごく普通の少年をヒーローのように語り部で語っていくような話というのは面白いなと思って、まずそのアイデアがあったのと、あともう一つは多聞の立ち回りのシーンのスローモーションのアイデアが出たので、そういう断片的なシーンをいくつか集めてそれからストーリーに組み立てていきました。オムニバスのような形になっていますけど、今回あえていろんな話をあまり直接的に結びつけずにシーンとしては別々にしながら、この人物像を一人の人間に感じられるようにできないかなと考えて、山田孝之さんが三役やってくれることになったのでそれが成立できました。一人の人間でもいい加減な面や激しい面、いろんな側面があって、そういうものを違う人物で描きつつ観終わったあとに一人の人間として感じられるような実験的な要素をこの映画に組みこんでみたんです。

Q:そういう意味では山田さんの存在というのは非常に大きいかと思いますが、監督から見て山田さんはどんな俳優ですか?

A:男の色気を感じたんですよね。僕の作品は色気をすごく大事にしていて、今回は特に男性が主人公で男の色気がある人っていうのがすごく重要だったんです。最近はすごくスマートで綺麗な男性が人気ですけど、山田孝之には珍しく昔っぽい、男の色気がある。今回出演して頂いた原田美枝子さんも「最近、色気のある映画が少なくなっているけど、この映画はすごく男の色気が出ていて良かった」っておっしゃってくださったので、彼の魅力を引き出せたかなと思います。彼自身は出演するということよりも映画を作っているという意識が強く、非常にクリエイティブな人という印象です。実際に映画祭に行って観客が喜んでくれているのを見て、「自分は素晴らしい仕事に携わっているんだな」と言っていたので、それはすごく作り手の感覚に近いんじゃないかなと思いました。

Q:今回、山田さんは一人三役に挑戦するだけでなく、ダンスを披露されたり新たな一面を見せてくれていますが、中でも圧巻だったのが多聞の立ち回りのシーン。臨場感たっぷりで、歌舞伎絵と融合した奥行きのあるあのシーンの世界観には目を見張りました。

A:本当に一発勝負といいますか、全員で一斉にすごく早いスピードで動いてもらってスローモーションカメラで撮影したんです。最初はそれぞれブルーバックで撮影して、合成しようかなと思っていたんですけど、それでは立ち回りが嘘っぽくなってしまうので、リアリティを出すために全員一斉に。そこに全員が集中して演じるという形をとりました。僕自身は前にいる人たちはリハーサルでうまくできることは分かっていたので、奥の人の指示ばかりしていました(笑)。

Q:本作は3つのエピソードで一貫して「恋」がテーマになっていますが、監督が今回「恋」をテーマにした理由とは?

A:恋をすることですごく人に優しくなれる。でも、本当に無垢な恋をするのは難しいと思うんですね。特に男性は無垢な恋に目覚める機会がすごく少ない。例えば母親が自分の子供に対して思うような無垢な愛っていうのは男性にはなかなかなくて、そういうものを男性も感じられたらいいなと。どうしても自我が強くなると自分中心な恋になってしまうけれど、好きなった女性に対して心から恋をすることで、相手のことを思いやれるようになって、そこから初めて大きな愛に繋がっていくと思うんです。だから、たくさん恋をして、本当の恋ができる相手を見つけていくことは男性にとって今すごく大事なことではないかと。あまり言い過ぎると説教臭くなるので、これくらいにしておきますが(笑)。あまりラブストーリーを見ない人も、今回はベッソンみたいなぶっ飛ばしキャラもいれながら男性でも楽しめるようになっていますし、多聞の純粋さも感じてもらえたらなと思います。

インフォメーション
映画『ミロクローゼ』
監督
石橋義正
出演
山田孝之、マイコ、石橋安奈、原田美枝子
公開
テアトル梅田、シネマート心斎橋にて公開中
URL
http://www.milocrorze.jp/

© 2012「ミロクローゼ」製作委員会




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