「殺さないで。死にたくない」。暗い穴の中に引きずり込まれ、泣きながら命乞いをする女性の上に問答無用に土砂がかけられた-。平成27年4月、千葉県芝山町で起きた女性=当時(18)=生き埋め事件。千葉地裁で行われている強盗殺人や逮捕監禁などの罪で起訴された実行犯の中野翔太被告(21)の裁判員裁判で、検察側は21日に無期懲役を求刑した。今月30日、判決が言い渡される。
「マジやる。殺す」
穴を事前に掘って準備する周到な計画性と、「埋めてやった」と笑いながら犯行を吹聴してみせる残虐性。人間はここまで残忍になれるのか-。
検察側の冒頭陳述などで凄惨(せいさん)な犯行の一部始終が明らかになるにつれ、法廷内には、形容しがたい重たい空気が充満していった。
事件が起きたのは、平成27年4月。公判での中野被告や関係者らの証言をもとに、事件を振り返ってみると、犯行を計画したのは同県船橋市に住んでいた女性の高校時代の同級生の少女(19)=強盗殺人と逮捕監禁罪で起訴=だった。
もともと2人は友人で、一時期は女性が少女の実家で一緒に暮らすほどの仲だったという。しかし、女性が友人から借りた、仕事の身分証として必要な中学校の卒業アルバムや洋服を返さなかったことからトラブルに発展。次第に不仲となっていった。女性が音信不通になるなどしたため、少女の憎悪が膨らんでいく。
「本当に(女性と)連絡取れなくて、取れたらキレる。警察に捕まる覚悟でやっちゃう」
「卒アル返さないしまじやる。中途半端にやって警察にばれると嫌だから殺す」
少女が友人らと電話などで交わした会話をまとめた捜査報告書には、当時の少女の怒りのすさまじさが生々しく記されていた。少女は、主犯格の男で肉体関係のあった井出裕輝被告(22)=強盗殺人罪などで起訴=に相談し、女性を捕まえ、現金を奪った上で殺害することを話し合う。
「穴掘り」で準備
事件前日の4月18日夜。井出被告は、仕事仲間で友人の中野被告に、「人を埋められる場所はないかな?」「埋める前に殺すのと生きたまま殺すのどっちがいいか」などと持ちかけた。
「殺してから埋めると重くなるからそのまま殺した方がいいんじゃない」。中野被告は平然と返答してみせる。2人で同県酒々井町のホームセンターへ赴き、女性を拘束するための結束バンドや粘着テープ、そして、「口に突っ込む」(井出被告)ための靴下を購入した。
その後、2人は井出被告の実家でスコップを調達。実家近くの畑で井出被告に「女の子が入るくらいの穴を掘っておいて」と言われた中野被告は、その場にスコップで、深さ約80センチの穴を掘ったという。井出被告は「あれだけ掘って女埋めればすぐ死ぬ」と話していたと言い、残忍な計画性が浮かび上がる。
あだ名で呼び合う
準備から一夜明けた4月19日早朝。レンタカーで千葉市に移動した2人は仕事終わりの少女と合流。女性が「100万円のシャンパンタワーをやる」と周囲に伝えていたホストクラブの前に駐車し、女性が店から出てくるのを待ち伏せた。