宮家邦彦のWorld Watch

〝中東屋〟も驚愕したイラク・モスル陥落 肥沃な三日月地帯の液状化が始まった

 日本中がワールドカップ開幕で盛り上がった先週、イラク第2の都市モスルがスンニ系過激派の手に落ちた。めったに驚かない筆者も今回はショックを受けた。なぜこれを予測できなかったのか。中東アナリストの端くれとして大いに恥じ入った。実は新年早々彼らはバグダッド西方の町ファルージャを再占拠している。ここは自省を込めて本年1月6日筆者が書き記したメモの一部からご紹介しよう。

 ◆正月早々ショックだったのはISIL(イラク・レバントのイスラム国)がファルージャを制圧したというニュースだ。

 ◆ファルージャといえば、筆者の2度目のバグダッド勤務となった2004年春、米軍が大規模掃討作戦を行ったスンニ派地域。同時期に日本人の若者3人が「人質」となったことで日本でも有名な町だ。あれから10年になる。

 ◆当時ファルージャは「イラクのアルカーイダ」の拠点だったが、結局米軍による掃討作戦は成功せず、その後武装勢力のテロはイラク全土に広がった。そのファルージャが再びアルカーイダ系の勢力に制圧された。やはり来るべきものが来たということだ。

 ◆「平和」という言葉を何百回唱えても、平和は来ない。誤解を恐れずに申し上げれば「平和」とは悪事を働く武装集団を、よりましな武装集団が圧倒的な武力で制圧し悪事を働けない状態にすることで初めて回復されるのだ。

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