本作がデビュー作となる著者・奥野宣之さんにインタビューを敢行しました! 著者自身による本の内容の解説から、デビュー作にしてベストセラーとなったこの本を最初に手にとったときの印象など、 本の裏側までたっぷりお話を聞きました。PART1では、執筆の裏側について迫っていきます。
- Q1:この本が奥野さんのデビュー作となるそうですが、この本を書くことになったきっかけを教えてください。
作家のエージェント業を行っているアップルシードエージェンシー社長の鬼塚さんから「企画書を作ってください」と依頼されたのが始まりです。複数あげた企画の中には、ノンフィクションから評論みたいなのまでいろいろあったのですが、日頃の問題意識や経験を生かして、特別な取材なしで書くことができるこの企画になったというわけです。企画書を渡すと数カ月で出版社を見つけてくれました。それがナナブックスさんです。
比較的、省労力で書けることに加えて、この方法論は画期的かもしれない、という考えもありました。情報整理術がクローズアップされている今こそ、ぜひ世に問うてみたいと思ったのです。ファイリングの専門家が学者なら、メモの専門家は記者、というわけで、多少は売れる要素があるんじゃないか、と。
- Q2:実際に本になって、手にとってみたときの印象や感想を教えてください。
おお、あのデータがこう「物体」になったか! と。なかなか感慨深いものがありました。あと、この装丁を見た瞬間、意外に売れるかも知れないと思いましたね、やっぱり。この装丁からは、僕が本屋で見かけたらかなりドキドキで開いて興奮しながらレジに持っていってしまうような、情報マニアだけが感じる色気、文科系フェロモンのようなものがバンバン出ています。
入稿からゲラが上がるまでは何週間か空いているわけです。僕は、自分の文章を読むとき、ダメなところばかり目がついて非常に苦痛を感じるたちなので、到着したゲラをなかなか素直な気持ちで開くことができませんでした。でも、意を決して読むとそんなに悪くない。むしろ上手いこというなあ、とすら(笑)。
- Q3:この本を執筆するにあたり、どのようなことに苦労されましたか?
わかりやすく書くこと、正直に書くこと、面白く書くことの3点です。まず、内容の多くは手でチマチマとやるノウハウの紹介なので、その作業フローは混乱を招かないよう、小学生にも分かるぐらいしっかりと説明する。次にその原理と効果について、冷静な考察を加える。アイデアはそんなに都合よく降って来ないし、仕事の効率は100倍にはならない、でも効果的な方法であることは間違いありませんよ、と。
最後は、それを読んで面白いエンターテイメントに仕上げる。日常生活でこういうことに困る、こんなことがありがち、といった普通の人が読んで「わかるわかる」となる日常のネタで流れを作って、その中に独自ノウハウをふんだんに埋め込むことを心がけました。
- Q4:現在、8万部突破という大ベストセラー書籍になっていますが、実感はありますか?
数字的な実感はありませんが、ブログでの書評なんかを見ると、すごい数になってきたなと思いますね。手帳に凝ったり、理想の情報整理システムを作ろうと試行錯誤したりするのは、珍しいことではなかったのだなあと驚いています。本を出すまではビジネス書レビューのブログは見たことがなかったけれど、今回いろいろ見て、普通のブログの文章や考察のレベルの高さには驚きました。
ベストセラー入りはとても嬉しいです。一番厳しい評価者、市場が認めてくれたということですから。ただ知的生産術・整理術というジャンルはこれまで、たくさんの名著があります。この本も最終的にその末席に加えてもらえればいいなと思います。