【日本の解き方】やはり高い国家公務員給与 官民格差是正なら3割カットせよ

2013.11.20

 政府は国家公務員給与を平均7・8%減額している特例措置を今年度末で終了する方針だという。国家公務員の給与は東日本大震災の復興財源を捻出するためとして、2012年度から2年間、減額されていたが、来年4月から以前の水準に戻ることになる。ただし、来年4月から消費税増税が実施されることを配慮して、中高年層の上昇を抑制する方針も併せて出されている。

 そもそも国家公務員の給与水準についてどう考えればよいのだろうか。政府には「利潤」という考え方がほぼないので、民間給与と比較して考えざるを得ない。

 この比較を行うのが、公務員改革で抵抗勢力になっている人事院だ。国家公務員はストライキを行うことができないなど労働基本権の制約を受けているため、その代償措置として設けられている中立的かつ独立性の強い機関が人事院である。そのためなのであろうか、その調査は公務員に「やさしい」ものだった。

 というのも、比較の対象が優良大企業に偏っている。事業所従業員数50人以上の企業を調査しているというが、調査した約1万社の内訳は、従業員数500人以上の企業が4000社程度、100〜500人の企業は4000社程度、50〜100人の企業は2000社程度となっている。

 国税庁でも同じような調査(民間給与実態統計調査)を行っているが、そこでは従業員1人以上の企業を調査しており、調査した約2万社の内訳は、従業員数500人以上の企業は8000社程度、100〜500人の企業は3000社程度、100人未満の企業が9000社程度と、小規模の企業の比率が高い。その結果、人事院調査の民間給与は国税庁調査より高くなっている。

 今年8月に出された人事院勧告では、民間給与は月収40万5539円、国家公務員給与は減額前で月収40万5463円、減額後で月収37万6257円だった(除くボーナス)。ベースとなる民間給与は、年収換算すると486・6万円となる。

 一方、9月に出された国税庁の民間給与実態統計調査では、年収349万円だ。本当に官民格差をなくすなら28%のカットでもいいはずだ。

 人事院調査の対象は、正規職員給与だが、国税庁調査では非正規職員給与も含まれている。政府は正規と非正規を均等扱いすべき立場なので、人事院調査が正規だけを対象としていることはおかしい。

 さらにいうと、国家公務員の場合、会社がつぶれる心配がないので、民間給与より低い水準でもいいかもしれない。となれば、3割以上カットしてもいいくらいだ。

 しばしば公務員給与をカットするとなると、「景気に悪影響が出る」などという的外れの議論が出る。マクロ経済の有効需要の観点から言えば、公務員の給与がカットされた分は、他の公的支出に回ったり、増税額の縮小になるので悪影響は少ない。そもそも公務員の給与が民間より高い水準だということ自体がまったく正当化できないので、その是正を行うのが先決である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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