財務省は「国の借金が過去最大の1024兆円になった」と発表した。一方で、財務省は「国債の海外売り込みを強化する」とも報じられている。
財務省が国内で国の借金を強調するときには、財政再建の必要性を主張し、その達成手段として増税に結びつける。しかし、海外で日本国債を売ろうとするときには、当然、日本の財政状態が良いことを強調しなければ、海外投資家から買ってもらえない。したがって、今の財政状況に関する評価としては、国内で「悪い」といい、海外では「良い」とやや矛盾したことを言いがちになる。
こうした国内外でのダブルスタンダードは、これまでもあった。国内では、国のバランスシート(貸借対照表)の右側にあたるグロスの債務額に対するGDP(国内総生産)比が200%といい、国外ではバランスシートの左側の資産も考慮したネットの債務額に対するGDP比100%などと言ったりしていた。
ただし、国内では学者やマスコミを簡単にだませても、国外の投資家は財務省にとって手ごわい。財政再建の必要性は世界各国で共通であるが、その手法としては、増税の前に政府資産の売却がある。
政府資産といっても、特殊法人などへの出資金や貸付金という金融資産が大半であるので、特殊法人などの民営化によって簡単にキャッシュにできる。政府資産の売却は、先進国では財政再建の方法として当たり前だが、日本では官僚の天下り先を失うことになるので、言及するのはご法度だ。このため、これまで財務省は海外での日本国債の売り込みをあまり積極的に行ってこなかった面もある。