前書き

『絵画と写真で見る 世界海戦史:レパントの海戦からフォークランド紛争まで』(原書房)

  • 2025/01/28
絵画と写真で見る 世界海戦史:レパントの海戦からフォークランド紛争まで / ヘレン・ドウ
絵画と写真で見る 世界海戦史:レパントの海戦からフォークランド紛争まで
  • 著者:ヘレン・ドウ
  • 翻訳:甲斐 理恵子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2024-11-06
  • ISBN-10:4562074752
  • ISBN-13:978-4562074754
内容紹介:
帆船から空母の時代まで時代を画す、世紀の一戦中世から現代にいたる、公海での壮大な交戦の数々を、見事な絵画、写真、地図で紹介。船が単純な構造のものから戦争機械へと発展する過程をた… もっと読む
帆船から空母の時代まで
時代を画す、世紀の一戦

中世から現代にいたる、公海での壮大な交戦の数々を、見事な絵画、写真、地図で紹介。船が単純な構造のものから戦争機械へと発展する過程をたどり、著名な指揮官、戦術、歴史的な背景とともに歴史の流れを変えた50以上の海戦を簡潔にまとめる。


[目次]

はじめに

1217年 サンドウィッチの海戦
1340年 スロイスの海戦
1350年 ウィンチェルシーの海戦
1571年 レパントの海戦
1588年 グラヴリンヌ沖海戦(アルマダの海戦)
1596年 カディス襲撃
1652~1654年 第1次英蘭戦争
1652年 グッドウィン・サンズの海戦
1652年 ケンティッシュ・ノックの海戦
1652年 ダンジネスの海戦
1653年 ポートランド沖海戦
1653年 ガッバードの海戦またはノースフォアランドの海戦
1653年 スヘフェニンゲンの海戦
1657年 サンタ・クルス・デ・テネリフェの海戦
1665~1667年 第2次英蘭戦争
1665年 ローストフトの海戦
1666年 セント・ジェームズ・デーの戦い
1667年 オランダのメドウェイ川襲撃
1672~1674年 第3次英蘭戦争
1672年 ソールベイの海戦
1673年 スホーネヴェルトの海戦
1673年 テセル島の海戦
1692年 ラ・オーグの海戦
1718年 パッサロ岬の海戦
1747年 フィニステレ岬の海戦
1759年 キブロン湾の海戦
1779年 フランバラ岬の海戦
1781年 チェサピーク湾の海戦
1782年 セインツの海戦
1794年 栄光の6月1日海戦
1797年 サン・ヴィセンテ岬の海戦
1797年 キャンパーダウンの海戦
1798年 ナイルの海戦
1801年 コペンハーゲンの海戦
1801~1805年 トリポリ港の戦い(第1次バーバリ戦争)
1804年 プロ・オーラの海戦
1805年 トラファルガーの海戦
1809年 エクス・ロードの海戦
1812年 1812年戦争(米英戦争)
1827年 ナヴァリノの海戦
1862年 ハンプトン・ローズの海戦
1864年 シェルブールの海戦
1898年 マニラ湾の海戦
1905年 対馬沖海戦(日本海海戦)
1914年 フォークランド沖海戦
1916年 ユトランド沖海戦
1939年 ラプラタ沖海戦
1940年 タラント空襲
1941年 マタパン岬沖海戦
1941年 戦艦ビスマルクの撃沈
1941年 真珠湾攻撃
1942年 ジャワ沖海戦
1942年 珊瑚海海戦
1942年 ミッドウェー海戦
1942年 ガダルカナル島の戦い
1942年 第1次ソロモン海戦
1942年 第2次ソロモン海戦(東ソロモン沖海戦)
1942年 サヴォ島沖海戦(エスペランス岬沖海戦)
1942年 南太平洋海戦(サンタ・クルス諸島海戦)
1942年 第3次ソロモン海戦
1942年 ルンガ沖夜戦(タサファロンガ沖海戦)
1943年 北岬沖海戦
1982年 フォークランド紛争

用語集
図版クレジット
索引
中世から現代までの公海での著名な交戦の数々を、絵画、写真、地図で紹介します。船が単純な構造のものから次第に高度な戦争機械へと発展する過程を見ながら、高名な指揮官、戦術などとともに歴史の流れを変えた海戦をたどる 『絵画と写真で見る 世界海戦史』から「はじめに」を特別公開します。

帆船から空母の時代まで

数世紀にわたる多くの海戦を研究すると、新技術や戦略とともに大きな変化が訪れたことがわかる。だが、明確な統率力をはじめ、変わらずに残った要素も多い。中世初頭の艦隊は、軍隊を運ぶための商船の寄せ集めだったが、20世紀までに巨大で強力な航空母艦が世界的権力のシンボルとなった。ガレー船の破壊槌から始まった兵器類は、船首楼の弓兵、砲撃台、臼砲艦を経て、大型装甲艦や原子力潜水艦へと発展した。3本マストの帆船の登場によって機動性が向上し、鉄と蒸気の登場によって軍艦が気まぐれな風から解放されて海戦に大きな変革が起こった。一方、航空母艦から航空機が離陸するようになると、海軍力に対する新しい考え方が求められるようになった。

多くの海戦のなかから重要な戦いを選びだすことは、やりがいはあるが難しい。さまざまな数字だけでは重要な戦いを定義することはできないし、1779年のフランバラ岬の海戦のように、小規模でも後世まで影響を与える出来事もある。1812年戦争は単艦同士の決戦が非常に効果的だったが、それとは対照的に大規模な艦隊の戦いが大混乱に陥ることもしばしばだった。すべての大戦に決定的な結果が出たわけでもない。たとえば、ユトランド沖海戦は、いまだに多くの歴史論争をまき起こしている。すべての海戦が純粋に海軍だけで戦われたわけでもない。1804年のプロ・オーラの海戦では、フランス海軍が商船の船団を相手に戦い、敗北した。そしてすべての戦いが公式に交戦中の敵が相手だったわけではない。たとえば帆船同士の最後の戦いとなった1827年のナヴァリノの大混戦や、1652年の第1次英蘭戦争に先立つグッドウィン・サンズの海戦がその例だ。1781年のチェサピーク湾の海戦や、第2次世界大戦中に太平洋で6か月間続いたガダルカナル島の戦いといった交戦は、広範囲にわたって影響をおよぼしたが、これは他の戦いではあり得ないことだ。戦闘にかんする良い情報には問題があり、戦勝国が歴史を書く場合はとくに疑ってかかる必要がある。戦いの記録を司令官が書けば、当然自分の決断を正当化しようとするだろう。ごく平凡な水兵や一般市民のような、あまり「重要ではない」個人の回顧録や目撃談は見過ごされがちだが、そういう記録のほうが実態を伝え得るのだ。問題はタイミングだ。人の記憶は当てにならないものなので、戦闘の数年後に書かれた記録は信頼できないかもしれない。18世紀までには新聞が活用されるようになり、偏見や誤報、検閲によって実情がかすむこともあるとは言え、当時の読者をぞくぞくさせる真に迫った記事を提供した。

商船を集めた急ごしらえの中世の船団から、やがて海軍が発達した。それが顕著だったのは17世紀だ。当時の二大商業国であるイギリスとオランダが、必要な支援と管理機能すべてを備えたプロの海軍をしだいに形成した時代である。プロの海軍はフランス革命からナポレオン戦争、そして第1次、第2次世界大戦にいたるまで、世界の覇権をめぐる闘争にずっと巻きこまれてきた。第1次世界大戦以前はドレッドノート級戦艦の建造で軍拡競争が繰り広げられ、トラファルガーの海戦のような決定的勝利が期待されたが、第1次大戦では海軍の戦いは効果が薄いと証明された。1919年からは空軍力の影響が大きくなり、第2次世界大戦では空母の重要性と価値が明らかになる一方で、潜水艦が海戦に新たな局面をもたらした。

こうした戦いの物語で輝きを放つのは、偉大なる指揮官たちだ。だが海で戦った無名の英雄たちも、男女を問わずやはり輝きを放っている。偉大な指揮官を比較することは難しい。ひとりひとりが、たとえば技術面ひとつとっても、多種多様で複雑なシナリオに対応しなければならなかったためだ。歴史学者ポール・ケネディは簡潔にこう述べている。「イギリスの英雄ネルソンなら150年前の旗艦上でもくつろいでいただろうが、同じくイギリスの海軍軍人ジェリコーとアメリカのニミッツは100年前の船上で途方に暮れていただろう」

[書き手]ヘレン・ドウ(歴史家)
エクセター大学で博士号を取得。同大海事史研究センター、王立歴史協会、王立芸術協会のフェロー。英国海事史委員会の副委員長兼理事を務める。英国政府の国家歴史船専門家評議会メンバー(HMSヴィクトリー、メアリー・ローズ号、カティ・サーク号、ウォリアー号など)。SSグレート・ブリテンの評議員、英国海事史委員会の副会長。著書多数。
絵画と写真で見る 世界海戦史:レパントの海戦からフォークランド紛争まで / ヘレン・ドウ
絵画と写真で見る 世界海戦史:レパントの海戦からフォークランド紛争まで
  • 著者:ヘレン・ドウ
  • 翻訳:甲斐 理恵子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2024-11-06
  • ISBN-10:4562074752
  • ISBN-13:978-4562074754
内容紹介:
帆船から空母の時代まで時代を画す、世紀の一戦中世から現代にいたる、公海での壮大な交戦の数々を、見事な絵画、写真、地図で紹介。船が単純な構造のものから戦争機械へと発展する過程をた… もっと読む
帆船から空母の時代まで
時代を画す、世紀の一戦

中世から現代にいたる、公海での壮大な交戦の数々を、見事な絵画、写真、地図で紹介。船が単純な構造のものから戦争機械へと発展する過程をたどり、著名な指揮官、戦術、歴史的な背景とともに歴史の流れを変えた50以上の海戦を簡潔にまとめる。


[目次]

はじめに

1217年 サンドウィッチの海戦
1340年 スロイスの海戦
1350年 ウィンチェルシーの海戦
1571年 レパントの海戦
1588年 グラヴリンヌ沖海戦(アルマダの海戦)
1596年 カディス襲撃
1652~1654年 第1次英蘭戦争
1652年 グッドウィン・サンズの海戦
1652年 ケンティッシュ・ノックの海戦
1652年 ダンジネスの海戦
1653年 ポートランド沖海戦
1653年 ガッバードの海戦またはノースフォアランドの海戦
1653年 スヘフェニンゲンの海戦
1657年 サンタ・クルス・デ・テネリフェの海戦
1665~1667年 第2次英蘭戦争
1665年 ローストフトの海戦
1666年 セント・ジェームズ・デーの戦い
1667年 オランダのメドウェイ川襲撃
1672~1674年 第3次英蘭戦争
1672年 ソールベイの海戦
1673年 スホーネヴェルトの海戦
1673年 テセル島の海戦
1692年 ラ・オーグの海戦
1718年 パッサロ岬の海戦
1747年 フィニステレ岬の海戦
1759年 キブロン湾の海戦
1779年 フランバラ岬の海戦
1781年 チェサピーク湾の海戦
1782年 セインツの海戦
1794年 栄光の6月1日海戦
1797年 サン・ヴィセンテ岬の海戦
1797年 キャンパーダウンの海戦
1798年 ナイルの海戦
1801年 コペンハーゲンの海戦
1801~1805年 トリポリ港の戦い(第1次バーバリ戦争)
1804年 プロ・オーラの海戦
1805年 トラファルガーの海戦
1809年 エクス・ロードの海戦
1812年 1812年戦争(米英戦争)
1827年 ナヴァリノの海戦
1862年 ハンプトン・ローズの海戦
1864年 シェルブールの海戦
1898年 マニラ湾の海戦
1905年 対馬沖海戦(日本海海戦)
1914年 フォークランド沖海戦
1916年 ユトランド沖海戦
1939年 ラプラタ沖海戦
1940年 タラント空襲
1941年 マタパン岬沖海戦
1941年 戦艦ビスマルクの撃沈
1941年 真珠湾攻撃
1942年 ジャワ沖海戦
1942年 珊瑚海海戦
1942年 ミッドウェー海戦
1942年 ガダルカナル島の戦い
1942年 第1次ソロモン海戦
1942年 第2次ソロモン海戦(東ソロモン沖海戦)
1942年 サヴォ島沖海戦(エスペランス岬沖海戦)
1942年 南太平洋海戦(サンタ・クルス諸島海戦)
1942年 第3次ソロモン海戦
1942年 ルンガ沖夜戦(タサファロンガ沖海戦)
1943年 北岬沖海戦
1982年 フォークランド紛争

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