SNSの先駆けとなった「mixi」、動画共有の「YouTube」や「ニコニコ動画」──最近話題になるサービスのほとんどがコミュニティーを前提としたものだ。
これら先行する成功者に続けとばかりに様々なネットサービスが登場しているが、現実は厳しい。ユーザーの参加が進まず閑散としてしまうサイトや、逆に「炎上」して閉鎖に追い込まれてしまうサイトなど、コミュニティーの扱いに手を焼いている運営者が多いのが現状だ。コミュニティーを運営するノウハウにいま注目が集まっている。
ところで、これまで最も成功したコミュニティーを活かしたネットサービスはなんだろうか? その答えに必ず挙がるのが、今やネットでの調べ物に欠かせない「Wikipedia」だ。
ウィキアはその創設者であるジミー・ウェールズが設立した企業。昨年5月より日本人スタッフが参加し、本格的に活動を開始している。ウィキアと言えば、今年1月にベータ版が公開された「Wikia Search」(関連記事)が話題となったが、本業は「Wiki」のホスティングサービスだ。これがどのように展開していくか、ウィキペディアの重要人物が始めたサービスだけに興味深いところだ。そこで今回、唯一のウィキア日本人スタッフの福澤俊さんにウィキアとウィキアでの仕事について話を伺った。
ドラえもん学の横山教授をスカウト
「Wikiを立てたけれど更新しなくなって、放置されているものが意外に多いんですよね……」
コミュニティーを継続する難しさについてウィキア・コミュニティスタッフの福澤さんは話しはじめる。
「ウィキアでは、そういう場合、そのままにせずに、ほかに更新してくれる人を探したりします。例えば、ドラえもんのWikiがあるのですが、作られてから、長い間更新が止まってしまって……。それで『ドラえもん学』で有名な富山大学の横山泰行教授に電話して、更新してもらえるように頼んだんです」
「コミュニティスタッフ」とは聞き慣れない肩書きだが、その主な仕事は、ウィキアで立てられるWikiが順調に成長していくようにサポートしていくことだ。他社のコミュニティーサービスとは違い、ウィキアでは直接ユーザーと関わりながら、コミュニティーの形成を行なっていく。多くのブログサービスでは個人ブログの残骸のようなものがたくさんあるが、ウィキアでは動きのないWikiを放置したりしない。これは、ウィキアが目指している方向性に由来する。
「ウィキアを説明するときにジミー・ウェールズがよく言っていることに『フリーコンテンツの図書館を作りたい』というものがあります。そこではWikipediaが百科事典に相当する。ウィキアのプロジェクトで作られるのが、それ以外の書籍であると。『この本をみんなで作りましょうよ』というのがウィキアのプロジェクトなんです」
ウィキアのWikiは個人のものではなく、コミュニティーのものというスタンスだ。そしてそのコミュニティーを盛り上げて投稿を促すこと、それが福澤さんの仕事である。