アナログマに食われた地デジカの顛末
クサナギ君の復帰が決まり、実質的な地デジ普及策としての「エコポイント」制度が始まって「地デジカ」が話題に上る機会もめっきり減ってしまった。だが、この歴史に残るオールドメディア対ネットコミュニティの戦いを忘れるわけにはいかない。
ここから分かったのはオールドメディア側の独善とネット側の創造力だ。これなら未来のネット社会も安泰。それが分かったのも地デジカのおかげだ。ありがとう、地デジカくん!
と、謝意を述べる前に、ご存知とは思うが、簡単にことの経緯をまとめておこう。
まずデジタル放送推進協会が地デジ推進のためにイメージキャラクターとして起用したタレント、つまりクサナギ君が全裸になって逮捕。その彼と入れ替わるように登場したのが、鹿をモチーフにした民放連のキャラクター「地デジカ」だった。
地デジカは公開されるや大きな話題になった。鳩山総務相と着ぐるみのツーショットはシュールだったし、スクール水着かレオタードを着ているようにも見える際どさもあって、様々な二次創作画像が次々とpixivに上がるようになった(右)。
しかし民放連側からは「スクール水着でもレオタードでもない」(ITmedia)、「二次創作キャラクターの作成や掲載につきましては、許されるものではありませんので、見つけ次第、厳しく対応していきます」(未来検索ガジェット通信)とつれない声が上がった。
そこで誰が思いついたか、鹿への対抗手段として2ちゃんねるのアスキーアートでおなじみ「クマー」をモチーフにした「アナログマ」が登場。「著作権完全フリー」を掲げ、キャラクターソングはできるわ、実写合成CGとなって街に大挙して現れるわで大変な活躍っぷりであった。これで大笑いして終わりでも良かったが、まだダメ押しがあった。
地デジカ公式ページの鹿に関する解説がwikipediaからの引用だったことが判明。wikipediaの文章にはGFDL(GNU Free Documentation License)という規定があり、無断の複製や改変は自由だが、その場合は出典を明記した上で、該当する文章にもGFDLが適用されなければならない。そこで、
「削除することでおわびに代えさせてもらいたい」(YOMIURI ONLINE)
という民放連側の釈明があったわけだが「それで済むなら著作権って何なんだよ!」という話だ。でも、ちょっと立場を変えて考えてみよう。何か問題になっても「削除することでおわびに代え」られるのだ。その程度の大胆さ、そして寛容さを期待しなければ新しいものは生まれない。
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