2010年のiPod周辺機器のトレンドはデジタル接続
静音性や耐衝撃性に優れるフラッシュメモリーは、デジタルオーディオプレーヤーとの相性が非常によい記録メディアだと言える。欠点としては容量あたりの単価の高さが挙げられるが、プロセスルールの細微化に伴って集積度が向上し、大容量化と低価格化が推し進められている。
こうして大容量化が進んだことにより、デジタルオーディオプレーヤーは外出先で使う携帯型プレーヤーとしての側面に加え、音楽ファイルが大量に保存されているストレージとしても注目されるようになった。ミニコンポにCDをセットするよりも、デジタルオーディオプレーヤーをスピーカーにつないで聴く方がはるかに手軽だからだ。
こうした流れの中で登場したのが、iPodに特化したアクティブスピーカー、いわゆる「iPodスピーカー」と呼ばれるジャンルの製品だ。さらに最近では、iPodとの連係可能なミニコンポや、既存のオーディオシステムにiPodを接続する周辺機器など、さまざまなジャンルの製品がリリースされている。
これらの製品の昨今のトレンドの1つとして挙げられるのが、デジタル接続への対応である。iPod対応のアクティブスピーカーやコンポなどの多くは、iPodから出力された音声を「Dockコネクタ」経由で受け取っている。Dockコネクタを使っているところを見ると、デジタルで出力されているような印象を受けるが、実は多くの製品が利用しているのはアナログ出力である。つまりiPod内のDACを使ってアナログに変換した音声をスピーカーから出力しているわけだ。
ただ、デジタルの音声信号を取り出す方法がiPodに用意されていないわけではない。アップルの認可を取得すれば、専用コマンドを使ってDockコネクタ経由でデジタル信号を受け取ることが可能である。これまでデジタル接続に対応した機器は少数だったが、ここにきて徐々に増えつつあり、iPod内の音楽を高音質で楽しめる環境が整ってきた。
そこで今回はデジタル接続に対応する3種類の製品をまとめてレポートしたい。iPodを差すだけで使えるスピーカー、iPodからデジタル信号を取り出し、S/P DIF端子経由で外部のアンプに出力するトランスポート、そしてiPod対応CDプレーヤーと、それぞれジャンルの異なる製品を取り上げている。ぜひ自分のスタイルに合った製品を選択して頂きたい。
厚みのあるサウンドが魅力「XW-NAS5」
パイオニアは、本連載でも紹介したCDレシーバーの「PDX-Z10」(関連記事)やAVアンプの「SC-LX82/72」など、以前からiPodとのデジタル接続に対応した製品を積極的にリリースしてきた。今回紹介する「XW-NAS5」は、そんな同社から満を持して登場したiPodスピーカーとなる。
筐体は後方に向かって丸みを帯びたシンプルなデザインで、本体上部の蓋を開くとiPodのDock端子を接続するコネクタが現れる。本体上部の操作部は、電源と入力切り替え、そしてボリュームと最小限のものしかなく、付属のカード型リモコンを使って操作することになる。
背面を見ると、CDプレーヤーなどを接続するオーディオ入力端子に加え、コンポジットとコンポーネントの映像出力端子が用意されている。これを使ってテレビに接続すれば、iPod内の動画をテレビで再生できるというわけだ。
左右のスピーカーは2.6cmセミドーム型のツイーターと、5.2cmコーン型のミッドレンジを持ち、さらに底面には10cmコーン型のサブウーファーが配置されている。音質は中高音から高音にかけては丸みのある柔らかい音という印象で、これに芯の通った低音が音に厚みを与えている。デジタル接続らしくiPodから出力される音とは思えないほどクリアな音質であり、さらに一体型のシステムながら広い音場が形成され、ボーカルも立体的に浮かび上がる。価格以上の満足感が得られる音質と言えるだろう。
XW-NAS5でユニークなのが、再生している音楽に環境音を付け加える「サウンドスケープ」と呼ばれる機能だ。リオデジャネイロ・コパカバーナ海岸の波打ち際の音、あるいはヨーロッパの街角の雑踏など、6種類の環境音が用意されており、これを使えばたとえば波打ち際で寝そべりながらゆったりと音楽を聴く、などといった気分を味わえる。
サブウーファーが極めて効果的に使われており、見た目以上に厚みのある音楽を聴かせてくれるのが最大のポイント。ただ低音だけで押しまくるのではなく、中~高音とのバランスもよいため、幅広いジャンルに対応できる1台に仕上がっている。使い勝手に加えて音質も求めるのであれば、ぜひ1度店頭などでこの製品を試聴してほしい。
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