表向きの景気のよさとは裏腹に、どの会社も将来に不安を抱えている。65歳まで働くとして、現在35歳であればあと30年も働かないといけない。日本経済にとって最後の好景気だと思って、次にどうするか考えないとやばい。総人口が減り始めている以上、消費が大幅に増えることは期待できない。自宅のほかに別荘、通勤用のほかにレジャー用の車が買えるのはごく一部の人だ。だから、若い起業家はITを武器に、既得権を破壊し、自分で新しい既得権を作ろうとするのだ。
参考になるのは、グーグルやフェイスブックなど、シリコンバレーの起業家たちだ。だが、調べていくうちに、テクノロジーとは何の関係もない、成功の法則を発見してしまった。成功企業には、男性2名のパートナーシップが関係しているのではないか。
古くはシリコンバレーのルーツともいえるヒューレット・パッカード。1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードが設立した。2人が出会ったのはスタンフォード大学だが、子どもの頃、どちらも手製の爆弾を作ったことのある科学少年だったという。マイクロソフト(本社はシアトル)は、1975年にビル・ゲイツとポール・アレンらが設立した。ゲイツとアレンは中高一貫校の先輩・後輩関係だ。アップル・コンピュータ(現アップル)は、1976年にスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックが設立した。ジョブズとウォズニアックはマイコンマニアの集まりで知り合った。グーグルの創業者もスタンフォード大学で知り合ったラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの2人。ウィキペディアを設立したのはジミー・ウェールズだが、ラリー・サンガーという協力者が初期のころから関わっている。一方、ソーシャルメディアのフェイスブックは5人、ツイッターは3人の創業者がいるが、どちらも仲違いが激しい。創業者は2人のほうがよさそうだ。
この関係を「裸の王様2人理論」と名付けよう。世界を変えたいという理想に燃える王様は、一人だけだと「あいつは裸だ、バカだ」と言われ、組織も世の中も動かない。ところが、裸の王様が2人並んでいると、もう「あいつは裸だ、バカだ」とは呼べなくなる。部下のほうから進んで服を脱ぎ初め、やがて組織は裸ばかりになり、世の中も変わる。日本中があぜんとした鳩山元首相の「私に「裸踊り」をさせて下さったみなさん、有り難うございました。」発言の種明かしで紹介された「裸踊りは、追随者が現れると、やがて周囲に伝播する」というTEDの動画も、2人目の裸の王様が重要であることを示唆している。
この種の起業や組織改革は、海外の話だけかと思っていたら、そうではなかった。1999年、経営危機に陥った日産自動車と提携した仏ルノーから送り込まれたのは、カルロス・ゴーンとベルナール・レイだ。必ずしも協力的とは言いがたい社内がまとまったのは、とても乱暴に言ってしまえば、裸の王様が2人いたからだろう。そんな日産で社内改革のリーダーを務めた1人が現横浜マリノス社長の嘉悦 朗(かえつ あきら)氏。1月23日開催のアスキークラウドイノベーションコンファレンスでは、基調講演「日産のV字回復と横浜マリノスの再生を支える改革スキーム」と題して、お話しいただくことになった。
また、配車アプリなどでタクシー業界のイノベーションをリードする日本交通からは、総務・財務部担当の野口勝己執行役員に「クラウドとデバイスで革新!新たな発想と技術でビジネスを成長させた戦略と戦術!」のテーマでお話しいただく。マッキンゼー出身のアイデアマンである同社川鍋一朗社長の下で、日本交通がどのように変わっていったのかの話が聞けるはずだ。
会社を変えたいと願うなら、まず仲間を作る。ビジョンやテクノロジーも大事だが、組織が動き出すには裸の王様が2人必要だ。そういうヒントを詰めてください、と事務局に頼んだイベントを今週23日木曜日に開催する。忙しくて私自身の言葉で開催を案内できないでいたが、幸い、若干席が残っているそうだ。嘉悦氏や野口氏の話が聞きたい方に、ぜひ参加して欲しい。
アスキークラウドイノベーションコンファレンス
- 日時
- 2014年1月23日(木)13:30~17:15(受付開始は13:00)
- 主催
- アスキークラウド編集部、オプンラボ
- 協賛
- 日本マイクロソフト 日本アイ・ビー・エム
- 会場
- 青山TEPIAホール(東京都港区北青山2-8-44)
- 参加費
- 無料(事前登録が必要です)
- 定員
- 150名(お申込み定員に達し次第締め切らせていただきます)
※イベントの詳細、申込みは、専用の申込ページから。