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売れる商品は「現場」から生まれるとわかっているのに、おろそかになるのはなぜか?

特集
世界に挑むICTスタートアップリーグ 成功への道

 事業の成功には顧客ニーズの理解が不可欠だ。しかし、顧客ニーズの調査不足で失敗するスタートアップは後を絶たない。アイデアや技術力に自信があるほど「いいものをつくれば売れる」と思い込み、顧客をおろそかにしてしまうのだ。

 ある医療機器スタートアップは、クリニック向けのプロダクトを開発するため、大病院との共同研究を経て国際学界でエビデンスを発表し、一定の評価を得ることができた。その後、医療機器の認定を取得して製品をリリースしたが、地域のクリニックには高額で使い勝手が悪く、想定したほど売れずに巨額の借金が残ってしまったという。

 医療・ヘルスケア領域の新規事業支援を手掛け、ICTスタートアップリーグでも支援を行っているデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の緒形昌輝氏は、「”大病院が推奨すれば普及する”という思い込みから、クリニックの予算に合わない、看護師にとって使いづらい、などの問題に気づかなかったのが敗因。エビデンスや権威付けは大事ですが、まずはクリニックで実証実験を行うなど現場の課題を検証し、クリニックに影響力のある学会にアプローチするなどの方法をとるべきでした」と話す。業界を問わず、思い込みはどの分野でも起こりうる。少人数のスタートアップは確証バイアスが起こりやすい。失敗を防ぐためには、意識しづらい第三者の意見を取り入れる仕組みも必要となるだろう。

文:スタートアップ研究部

ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。

※ICTスタートアップリーグとは?

ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/

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