ボッシュが新本社で実践する、人財を生かす戦略と理念ドイツ企業のこだわりが光る社屋

モビリティ向け製品やソリューション開発で知られるグローバル企業「ボッシュ」が横浜に新本社を移転した。大樹に見立てた巨大オフィスで目指す、コラボレーションとコミュニケーションを育む文化とは。

» 2024年12月05日 10時00分 公開
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自動車業界は「100年に一度の変革期」 複数拠点の機能と従業員を新本社に集約

ボッシュ新本社(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

 神奈川県の横浜市都筑区は、ドイツと深いつながりを持つ街として知られる。東アジアに現存するドイツ在外学校の中でも特に古い歴史を持つ東京横浜独逸学園の他、多くのドイツ系企業がオフィスを構えている。地域住民との交流も活発で、毎年12月には「ドイツクリスマスマーケットin都筑」(主催:都筑区・ドイツ交流イベント実行委員会、センター北商業振興会)といったイベントが開催されている。

 この都筑区に2024年5月27日、日本法人および一部のグループ会社本社を移転したのが、ドイツに本拠を構えるグローバル企業のボッシュだ。

 ボッシュ・グループは、モビリティ、産業機器テクノロジー、消費財、エネルギー・ビルディングテクノロジーという4つの事業セクターを世界で運営している。日本のボッシュ・グループは、主に自動車システムの開発、製造、販売およびサービス事業を展開する他、自動車用補修パーツや電動工具、油圧機器事業、FAモジュールコンポーネントや関連システムの開発と生産、さらには人命や建築物、財産などを守るセキュリティ製品の提供なども手掛け、国内産業の発展に貢献してきた。

 そんな日本のボッシュが今回の本社移転に踏み切った背景には、どんな理由があったのだろうか。ボッシュの渡辺和徳氏(フュージョンプロジェクト推進室)はこう語る。

 「当社グループは近年、事業拡大に伴う人員増加で、関東では東京や横浜エリアに8つの拠点を構えて活動していました。自動車業界が『100年に一度』と言われる変革期を迎え、電動化や自動化、さらには『SDV』(Software-Defined Vehicle:ソフトウェアによって機能や性能を定義した自動車)への開発が加速する中で、私たち自身も変革が急務となったのです。事業部間やグループ会社間を横断したコラボレーションを促進していかなければ、お客さまの新たな価値創出を支援できません。そのためにも人財をより近い場所に集める必要がありました」

 こうして東京、横浜エリアの複数の拠点に分散していた約2000人の従業員を、研究開発機能を備えた新本社に集約。約2キロの距離にある既存の研究開発施設と合わせると、都筑区に位置する2つの研究開発施設に日本のボッシュ・グループ全体の4割以上の従業員が集約されることになった。

渡辺和徳氏 ボッシュの渡辺和徳氏(フュージョンプロジェクト推進室)

地域住民も利用可能なカフェやショールーム

 ボッシュの新本社は、横浜市営地下鉄「センター北」駅から徒歩約5分の場所にある。先端テクノロジーの研究開発を手掛けるグローバル企業の日本本社と聞けば、厳重なセキュリティに守られ、関係者以外は安易に立ち入りができないオフィスビルを想像するかもしれない。

 だがボッシュの新本社はそんなイメージとは全く違っており、部外者を阻む“高い壁”は存在しない。1階部分は、地域住民をはじめ誰でも自由に訪れることができるのだ。広々とした1階フロアには、プレッツェルからハンバーガー、カリーブルスト(ドイツのソーセージ料理)や焼き菓子などの幅広いメニューが充実し、本場のドイツビールまで楽しめるおしゃれなカフェ「cafe 1886 at Bosch」が併設されている。

 1階のコーポレートショールームでは現在、1900年代の自動車部品のレプリカから、電動工具、家電の歴代製品が展示され、ボッシュの幅広いポートフォリオと長い歴史が伺える。さらにオーディトリアム(大会議室)、中・小会議室、シアターといった設備についても、2025年以降一般の利用が可能(事前に申し込みが必要)となっている。大会議室には同時通訳ブースや大型モニターなどの設備を有し、約200人を収容可能だ。

フロアは全長150m、「大樹」イメージのオフィスはここがすごい

バーティカルコネクション 上下階をつなぐバーティカルコネクション(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

 ボッシュの新本社には「ここで皆と一緒に思う存分に仕事をしたい」というモチベーションが自然に湧き上がってくるような、ドイツ流のデザインコンセプトが至るところに施されている。「大樹」を社屋全体のモチーフに取り入れ、フロアごとにデザインを変化させているのだ。地域に開放された地上階はアースカラーを採用し、地元に根付くことを示唆し、地域が提唱しているグリーンマトリックスの要素も取り込んでいる。そこから従業員専用の上階に上っていくにつれて徐々に緑色があふれ、最上階は空のイメージでスカイブルーを取り入れたフロアデザインとなっている。

 「フロアカラーで雰囲気を変えながらも、共通の機能をどのオフィスフロアにも持たせることで、その日のコラボレーションパートナーに近い場所を自由に行き来しながら働ける、フリーアドレスのオフィス設計としています」

 このデザインコンセプトの下で、新本社の最大の特徴となるのが、全長約150メートルにわたって横方向に広がるフロアだ。

 「高層ビルのオフィスでは、各部署が異なるフロアに分断され、エレベーターや階段などで“縦”の行き来をしなければなりません。同じフロア内で“横”へ移動するだけなら、人の行き来は無意識にしやすくなります。そのプレートをゾーンで分けながらも連続的につなげることで、部署を超えたコミュニケーションを促進する環境が造られています」

 更に“縦”の行き来も重視している。フロアの中央には東西2つの大きな吹き抜けがあり、オープンな階段空間には豊かな自然光が差し込むとともに、壁面には本物の植物を利用したグリーンウォールがある。「大樹」を上り下りするリフレッシュ感覚で縦の行き来を増やし、横の移動より縦の移動の方がしやすいと感じるほど、社屋全体のコミュニケーションとコラボレーション促進に寄与している。

オフィスに昇降デスク、オフィスフロアに「ライトラボ」 働きやすい工夫の数々

 新本社のオフィスフロアをさらに詳しく見てみると、大きく3つのゾーンがあり、働き方に応じて最適な場所を選べるようになっている。

ALTALTALT 左より「コラボレーション・ゾーン」「インディビジュアル・ゾーン」「アジャイル・ゾーン」(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

 中央に位置するのは「コラボレーション・ゾーン」だ。会議室の他、コーヒーブレイクの場としても利用できるパントリーなどのコミュニケーションスペースが設けられている。多様な部署やグループ会社の従業員がここに自然に集まり、新たな発想につながる偶発的な出会いやアクティブな会話を生み出している。

 一人で静かに仕事に集中したい従業員のために、フロアの両サイドに設けられているのが「インディビジュアル・ゾーン」だ。

 「自分の身体に合う机の高さで働ける、立ったまま健康的に仕事ができる、など従業員が快適に業務ができるようにワークプレースには全て昇降デスクを導入しています。ソフトウェアエンジニアの生産性を高める縦横回転式のマルチディスプレイなど、設備とオフィス家具にこだわっています」

 前述の2つのゾーンの中間に配置されているのが「アジャイル・ゾーン」だ。プロジェクトのニーズに合わせて柔軟に可動できるオフィス家具やパーティションを導入し、部署やグループ会社をまたいだコラボレーションを促進している。また常に変革していかなければならない世の中で、今後の組織変革などにも柔軟に対応できるエリアとなっている。

 オープンな空間でコミュニケーションしながら仕事ができる「エンジニアファースト」の環境づくりは、研究開発部門についても徹底されている。重たい実験設備や開発車両を利用する研究向けの「ヘビーラボ」以外に、中〜小型の実験設備を利用する研究開発は、オフィスフロアに設けられた「ライトラボ」を利用できるようになっている。

 「『ライトラボ』は多くの業務部門が混在するオフィスフロア中央に配置し、あえてガラス張りにしてオープンにしました。エンジニアの疎外感を防ぐとともに、異なる事業領域の開発チーム同士の交流や連携を促進しています」

ALTALT 左:「ヘビーラボ」のステアリングテストルーム、右:ガラス張りの「ライトラボ」(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

異なるバックグラウンドや個性を持つ人材を尊重したオフィス設計

 約40カ国にまたがる多国籍の従業員がチームを組んで働くボッシュならではの特色として、DEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)を重視したオフィス設計を導入している点に注目したい。

 「授乳室や搾乳室、多様な宗教の祈祷(きとう)やヨガなどにも利用できるマルチパーパスルーム、LGBTQの従業員が他者の目を気にすることなく利用できるユニバーサルデザインのトイレなどを設置しています。異なるバックグラウンドや個性を持つ人財を受け入れ、尊重してこそ、一人一人が能力を最大限に発揮し、組織の成長やイノベーションにつながっていくというのがボッシュ・グループの一貫した考え方です」

 さらに従業員投票で決まった地中海をテーマとするデザインを採用した約500席の従業員食堂、半屋外のバルコニー、最上階のルーフトップテラスやルーフトップエリア、新本社の周辺をランニングやウオーキングした後に浴びられるシャワーなど、休憩やリフレッシュのために利用できる施設も充実している。

 実はこの新本社、横浜市が公民連携で進めてきた「都筑区における区民文化センター等整備予定地活用事業」の事業者にボッシュが選ばれたことが、建設のスタートだった。

 同じ敷地内には「ボッシュ ホール」と名付けられた都筑区民文化センターが2025年3月にオープン予定だ。「行政と共に地域のにぎわいを創出していくことも私たちのミッションです」と渡辺氏は言う。

ALTALT 左:7階の「ルーフトップバルコニー」、右:2025年3月にオープンする「ボッシュ ホール」(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

 100年に一度の自動車業界の変革期を支えていくボッシュ自身のイノベーションを加速するために、同社はオフィス設備などのハード面だけでなく、人事施策のようなソフト面にも注力している。エンジニアを中心とする従業員に対して、自律的な成長やキャリア開発を支援する制度、施策に力を入れているということだ。

 ボッシュでは、一人一人の従業員のリスキリングやアップスキリングを目的とした研修、「40から始めるキャリア投資」プログラムなど、多彩な教育制度や人事施策を取り入れ、実践している。具体的な取り組みについては、次回の記事で詳しく紹介しよう。

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提供:ボッシュ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年12月19日