家具小売り最大手ニトリホールディングス(HD)が、川崎市内のインターネット通販向けの自社倉庫の一部を「ロボット倉庫」に切り替え、報道陣に公開した。ノルウェーの企業が開発したシステムで、国内では初の導入という。現場を歩き、集荷作業の効率化と倉庫面積の削減を両立したシステムの実態に迫った。
コンテナ上部を自動走行し、商品を出し入れするロボット(川崎市のホームロジスティクス通販発送センター)
コンテナ上部を自動走行し、商品を出し入れするロボット(川崎市のホームロジスティクス通販発送センター)

 3月11日午後。記者はニトリHDの物流子会社、ホームロジスティクスの通販発送センター(川崎市)を訪れた。ホームロジスティクスはニトリグループの通販商品の発送などを担う。2010年に完全分社化し、2012年からはグループ以外の配送業務も受託している。

ノルウェー企業のシステムを導入

 まずは、今年2月にニトリHD社長に就任した白井俊之氏と、ホームロジスティクス社長の松浦学氏が説明した。白井社長は「車で来店しないお客様が増え、小さな商品でも配達するようになった。通販サイトでの注文も増えている」と述べたうえで「リードタイムの短縮とコスト抑制が重要課題になっている」と導入の背景を話した。

 このシステムは、ノルウェーのHATTELAND(ハッテランド)社が開発した「オートストア」。商品を収納したコンテナを積み上げ、最上部をロボットが自動走行。コンピュータ端末からの指示に基づいて、ロボットが上から商品を出し入れする仕組みだ。作業員がコンテナの横を歩き回って商品を出し入れする必要がなく、通路スペースも設けなくて済む。

 松浦社長は、昨年の欧州出張時にオートストアを視察した。「IT化と機械化を両立できるシステムとしてビビッと来た」といい、導入を決めたという。オートストアは今年2月、川崎市の通販発送センターで稼働を始めた。

 説明を聞き終えた記者は、まずコンテナの最上部へ。階段を上がると、説明の通り、無数の赤いロボットが縦横無尽に動く様子が見えてきた。現在、倉庫では最大積載重量30kgのコンテナ、約3万個を12段に分けて積み上げ。通販発送センターで扱う1万3700品目の約6割に当たる8100品目の生活雑貨などを、オートストアで収納している。コンテナは最大16段まで積み上げて使用できるという。

手前のコンピュータ画面で、全てのロボットの動作状況が分かる
手前のコンピュータ画面で、全てのロボットの動作状況が分かる

 ロボット1台の消費電力は、掃除機の10分の1。4時間の充電で最大20時間稼働する。充電量が残り4割を切ると、走行スペースの端に設置された充電機器のもとに自ら進んで行って充電する。コンテナ最上部の横にはコンピュータ画面があり、全てのロボットの走行状況が確認できる。コンテナにはそれぞれ番号が付いているが、2番のコンテナには鳥のロゴをつけて社名の「ニトリ」をもじるなどの遊び心も取り入れた。

商品の入出庫作業も快適に
商品の入出庫作業も快適に

 記者は続いて、コンテナ下の入庫・出庫作業を見に行った。ここでは作業員が、端末を操作してコンテナを手元に取り寄せ、商品を積み入れたり、必要な分だけ取り出したりする。作業を終えるとベルトコンベアーで次の商品や箱が運ばれてくるほか、作業中に出る不要な梱包資材などは、上にある別のベルトコンベアーに載せればそのまま持って行ってくれる。

 入出庫を担当する作業員を見ると、倉庫内を歩き回ることなく、持ち場でずっと仕事しているのが分かる。これこそが、ニトリグループがオートストアの導入で狙ったものだ。作業負担を減らし、快適な労働環境作りを意識している。システムの導入で倉庫面積を従来の半分、作業者数を4分の1に減らせるという。

自動生成機(右下)で、多様な形・大きさの商品を包む段ボールが作れる
自動生成機(右下)で、多様な形・大きさの商品を包む段ボールが作れる

 最後に、段ボールの自動生成機「ボックスオンデマンド」を見学した。これはハッテランド社製ではないが、定型の段ボールでは入りきらない商品を梱包する段ボールを自動的に作る機械だ。長さや高さが通常のサイズとは違う商品などに対応する。商品の情報を読み取ると機械が動き出して、形や大きさ、長さに即した段ボールを自動的に作り上げる。これにより、大きめの段ボールに緩衝材を余分に入れて商品を梱包する必要がなくなり、輸送スペースが減り物流コストの削減にもつながったという。

 オートストアなど、通販発送センターへの今回の投資額は明らかにしなかったが、ホームロジスティクスの松浦社長は「3~4年で回収できる」とみている。

 国内では人口減少が続くうえ、日本という狭い国土では倉庫スペースを確保し続けることが難しい。かたやネット通販が普及し、物流のニーズは高まる一方だ。ニトリHDの白井社長は入社後、長く物流の業務に携わり、作業を効率化する必要性を強く感じていた。ニトリグループが始めた新たな取り組みは、他の物流関係者にも大いに参考になるだろう。

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