日経ビジネスベーシックについてはこちら
4月の新年度は異動や転勤時期でもあり、何かと忙しいと感じる方も多いでしょう。ただ、ビジネスパーソンの働き方は、今年度から大きな節目を迎えます。
それは、政府が大きく関与している「働き方改革」です。かつては、「長い時間よく働く」というのは日本人の美徳とされていました。世相を反映するフレーズとしても、高度成長時代の「モーレツ主義」、80年代の栄養ドリンクCMに代表される「24時間戦えますか」は、その時代の働き方を端的に表しています。
しかしながら、そうした働き方は今日において、奨励されるどころか、「ご法度」とされています。その背景には、安倍政権がこの3月にまとめた働き方改革の実行計画があります。
この働き方改革を巡っては、議論の過程で、経団連と連合が「あること」について延々と議論を巡らせていました。それは1カ月の残業時間の上限規制です。
経団連は「100時間以下」を主張し、連合は「100時間未満(99時間59分59秒)」を叫びます。この「1秒差」が対立軸となり、決着がつかないまま「100時間を基準とする」とした労使合意書が安倍首相に提出されました。
最後は、安倍首相が「100時間未満でお願いしたい」と両トップに最終通告し、折り合いをつけ、何とか3月末に計画を取りまとめました。
安倍首相みずから事態収集に乗り出したのは、理由があります。世論の注目を浴びる改革について、新年度に持ち越すような発表遅れをしたくなかったからです。
安倍首相の決断から抜け落ちたもの
その意味で、安倍首相がリーダーシップを発揮できたと見えますが、ここに「抜け穴」がありました。それは、年間の残業上限720時間に休日労働が含まれなかったことです。つまり、平日の残業上限を設けても、休日にそのしわ寄せがくる可能性があるということです。
そもそも「働き方改革」の本質が長時間労働の是正ということであれば、「1秒差」の議論より「休日労働」こそが、本質的な課題でありました。しかしながら、「1秒差」の議論に時間を取られ、タイムオーバーとなってしまったのです。
本記事では、ビジネスパーソンにとって生産性が高い「会議術」を紹介しています。実は、時間切れとなって大事な議論が煮え切らないことは日々の会議でよくあることです。
それは、会議を仕切る議長も参加者も「おとしどころ」というシナリオを持っていないことに起因します。会議はどこまで時間が延びても、必ず制限時間が迫ってきます。シナリオ無しに進行すれば、結論を固める前に制限時間が先にやってきてしまうのです。
ではどうやって会議シナリオを作ればいいのでしょうか?
「ぼんやり」と3つのシナリオを描く
会議に臨む前に3つのシナリオを「ぼんやり」と描きましょう。「ぼんやり」でいいのです。3つのシナリオを描く順番は以下になります。
まず、「理想のシナリオ」を描きます。時間内にいくつかの論点に対する結果が出され、参加者も納得する決着です。理想的ですが、「働き方改革」の様に対立軸が鮮明であれば、中々理想シナリオを描くことは至難の業になります。
次に「最悪シナリオ」を描きます。人間、最悪の状況さえ描かれていれば、何とかそこから修正改善できます。会議時間の半分を過ぎて、「最悪シナリオ」に突入しそうであれば、議長みずからが改善修正していけばいいのです。
最後が「中間シナリオ」です。現実には、何かを決める会議の多くがここに落ち着きます。「理想」と「中間」の間といえば、簡単に聞こえますが、実際は何かを欠いたり、不満足な形で終わったりします。それを参加者全員に納得させることが必要となります。
会議を預かる議長は、3つのシナリオをぼんやり描き、時間の経過とともに、「理想」「中間」「最悪」のどこに属しているかを「鳥の目」でチェックしていかなければなりません。
なぜなら、会議参加者の多くがシナリオを持っていないため、「虫の目」で会議に臨んでいるからです。
時間制約の中で、軌道修正する
先の「働き方改革」の場合はどうだったでしょうか? 以下のように考えられるのではないでしょうか。
理想のシナリオは、1カ月の上限が100時間未満」で、年間720時間上限の中に休日労働を含めます。実際は、安倍首相が鶴の一声でなんとか中間シナリオに落ち着いたということです。見習うべきは3月末までという時間制約の中で、軌道修正したことです。
会議には、時間の制約がつきものです。しかも、その結果を固めなければならない期限もあります。そのためにも「鳥の目」でぼんやりとシナリオを描きましょう。
登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。