概要
外患誘致罪とは日本の刑法。日本で最も厳しい罪と言われ、法定刑は死刑のみ。「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者」に対してこの罪が適用される。未遂でも処罰される。
通謀して武力を行使させるとは、平たく言えば外国の政府(に相当する勢力や組織)と連絡を取り合って「日本を攻撃するべきです」などと唆した結果として武力攻撃が発生したり、外国政府が日本に武力行使をするのを知っていたうえで、「○○地域の防衛が手薄だ」などと武力行使の決断に役立つような情報を流したりすること。
類似する刑法に外患援助罪があり、「日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者」は死刑または無期もしくは2年以上の懲役によって罰せられる。こちらは必ずしも有罪=死刑ではないが、同様に重たい刑である。
外国軍の手先になって戦ったり、自らすすんで情報や資金や物資などを提供したりすると該当することになるだろう。
ただし、どちらもこれまで適用された者はいない。もちろん具体的な証拠を伴って裁判で争われたことも判例も無いので、未遂の条件などを含めて「具体的にどういう状況で」となるかは現状では断定できない。
罵詈雑言としての濫用
ネット上の投稿などで、政治家や著名人の言動が気に入らない時の罵倒として「外患誘致罪を適用しろ」という表現をする者も見られる。
これは外患誘致罪=確実に死刑が法律で定められていることを前提に、暴言を禁ずるSNSなどの利用規約の抜け道のつもりで直接的な表現を使わずに「死ねと主張している」形になるので、悪質な誹謗中傷行為にあたり得る。
暴力的発言や危害を加える目的の発言と判断されれば、発言者のアカウントがBANされるといった恐れもあるので、この言葉を軽々しく罵倒代わりに使うべきではない。
そもそも発言者が外患誘致の意味をよく理解していない場合や「外患」を拡大解釈していることも多く、例えばアジア系の外国人や移民に対する過度な優遇措置(もしくはそのように見える言動)を外患であるから罰しろという一見まともそうに聞こえるものや、防衛費用の増大などについて「武装しているから攻められるので防衛力の整備は外患誘致」や「日本が武力行使する」ことを問題視するといった明らかに無理のある内容を訴えている事まで様々である。
概要で述べたように、この法律は「外国と連絡を取り合い、その国が日本へ攻め込むよう誘導や工作を行った」、そして「その連絡によって武力攻撃が生じた」こと(その未遂)を罰するものであるため、例えば日本国内の何者かが中国に資金援助し、その後に中国が攻めてきたとしても、その者が通謀した事実や外国の軍事力が動いたこととの関係性など、立証の前提となるハードルはかなり高い。(もっとも、中国企業の収益は中国の税金となり侵略活動や人権侵害の資金源になることは明白なため、中国産の購入自体は間接的に世界平和を脅かしていると言える。)
極端な話、政治的取引によって日本の主権をどこかの国に売り渡さんとするような為政者が出たとして、そこに「武力行使」が発生しないのであれば、この罪状では起訴されないことになる。
むしろ、そうした行為を画策できる立場の権力者や防衛関係者などが外患誘致に該当する行動を取ろうとすると、その前段階で機密情報の漏洩など他の法律を犯しまくることになるので、武力攻撃に至るまでの隠蔽が凄まじく上手く行くか、攻撃発生までわざと泳がされるといった不自然な状況でもない限り先にそれらの罪状でとっ捕まることになるだろう。