義民伝兵衛と蝉時雨

バラベントの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

バラベント(1962年製作の映画)
4.5
シネマ・ノーヴォの旗手グラウベル・ローシャ監督の長編デビュー作。つい先日観た「ラ・ヴァレ」は部族や民族を外部から覗いた視点の作品だったが、本作は部族や民族の内部に入り彼らの視点から世界を感じることの出来る作品。アフリカからブラジルに奴隷として連れてこられた孤立部族達の子孫である黒人漁師達。彼らの集落では未だに守り神の存在を心の底から信じ、踊りを捧げ、供物を捧げ、大漁を祈願している。この様な神に対する彼らの規則は沢山あり数知れない。科学とは真逆の宗教的な儀式。その裏でそれらを操作し部族の狂信的なアミニズムを利用して黒人漁師達に無賃金で魚を獲らせて大儲けをしている近代的な都市部の人間がいる。漁師達の迷妄(狂信的なアミニズム)を取り払い、貧困や無知や搾取から救いだそうとする真の救世主が現れる。それは彼らの信じていた神ではなく漁師達の集落を離れてひとり都会を見てきたアウトローの青年だった。「バラベント」とは大地と海が一変し、愛や生活や社会が変貌する激しい瞬間のこと。部族的な生活様式が近代にそぐわず終わる瞬間。しかしブラジル、サルバドールのブラキーニョの海岸、そして青空に浮かぶ入道雲は変わらずに美しい。