@シネ・ヌーヴォ ~フィルム・ノワールの世界vol.4~
恐れ入りました。凄いとは思っていたけどラングはやっぱり凄い。紀元前の人が観ても現代人が観ても、どの時代でもまさに「今」を映した映画になり得ると思った。
誰もが剃刀の刃を持っている。そして、それを誰かの喉に突き立てたいという欲望を持つことは仕方ないんだと思う、人間は所詮動物だから。あいつが誘拐犯らしいぜ、というたった一言が瞬く間に拡散され、暴徒化する群集は獣となり、その剃刀の刃は強大な剣になる。私刑による死刑への扇動はいつの時代も変わらない。
ラストはアメリカ的という意見があるらしい。アメリカ的が何を指すのかわたしにはわからないけれど、わたしはあのラストに救われた。彼は納得していないんだと思う。でも、22という数字を実感し、彼女の必死の説得を受け止めたからこそ、彼は自分を殺さなかったのだと思いたい。
わたしはこの映画の様々な「顔」を忘れない。知らず知らずのうちに、わたしもあの「顔」になってしまわないように。
あと、レインボーのことも忘れない。犬…犬…可愛かったのに 涙