今日日キム・ギドクの性が絡んだ映画について倫理的に語るならばあれこれ言葉を選んでしまうが、本作についてはシンプルに良い映画だった。この監督は一貫して水の使い方が美しい。娼婦という、ある意味、穢れた人間を描くなかで水は浄化作用があり、対位法的な効果が現れる。海辺までいけば「死」も連想させる。それは「セックス」に直結して、否が応でも人間の動物的な哀れな性を思い知らされる。原題は「青い門」というらしいが、やはり青、つまり水がミソであるわけで、邦題の「悪い女」も悪くはないが、何かしら水を連想させるべきだったんじゃないかと思う。