mat9215さんの映画レビュー・感想・評価

mat9215

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我ら山人たち(1974年製作の映画)

4.0

労働に従事する服装でカメラに堂々と対峙する人々は、アウグスト・ザンダーの写真に登場する人々と共鳴している。自分が語る音声を聞く姿もよい。ドキュメンタリー映像に登場する人々がカメラ=撮影者に対して語るこ>>続きを読む

ザ・ルーム・ネクスト・ドア(2024年製作の映画)

3.0

ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが相手を思いやり、ときには逸脱する会話劇はスリリング。ジョイスの『ザ・デッド』が二人の話題に上った時に予感した通り、ジョン・ヒューストンの遺作のエンディングが>>続きを読む

花形選手(1937年製作の映画)

5.0

田舎道を軍事教練で行進する学生たち。その後を女学生たちが追う。人々が進む方向に移動するカメラで人々が真正面から捉えられる。学生たちが横並びで突撃を開始すると、カメラは一転して横から学生たちを捉え、走る>>続きを読む

愛する時(2023年製作の映画)

2.0

ドイツ軍人と恋仲になった女性たちが丸刈りにされ水を浴びせられる記録映像(femmes tondues)から始まり、LGBTQ+描写まで盛りだくさん。

真心を込めて招待します(2025年製作の映画)

3.0

ウィル・フェレルはいつもながら顔だけで面白い。リース・ウィザースプーン側は南部の白人ばかりで、フェレル側は多くの人種が集っている。

夢見る人(2023年製作の映画)

4.0

ラファエル・ティエリーというネアンデルタール系の骨相を持つ俳優で成立している静謐なメロドラマ。粗野な風貌に似合わぬ落ち着いた声で喋り、バグパイプを弾く。ステージにバンドのメンバーとして登場し「盛り上が>>続きを読む

生まれながらの悪女(1950年製作の映画)

3.0

オープニングでは、ジョーン・レスリーの居宅内で手際よく物語が始動する。階段を上がった二階の廊下という狭い空間で人が行き交い、レスリーが唐突に転倒し、ジョーン・フォンテーンが登場する。ザカリー・スコット>>続きを読む

(2025年製作の映画)

4.0

吉田大八の過去作『美しい星』や『羊の木』にあった不穏な雰囲気が漂う。前半で丁寧な暮らしぶりが客観的に描写される一方で、後半で悔恨や欲望や不安が夢や妄想として溢れ出すのは主観の極みだ。ギャスパー・ノエの>>続きを読む

ボーダーランズ(2024年製作の映画)

3.0

『グリーン・インフェルノ』を作ったイーライ・ロスとは思えないレイティングPGワールドだ。ロバート・ロドリゲスが『アリータ:バトル・エンジェル』を作る感じ。赤髪のケイト・ブランシェット様は頑張っている。

ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間(1992年製作の映画)

3.0

巻頭、テレサ・バンクス殺人事件のパートは、リンチ御大が大声で喋ったり、赤いスーツの女の仕草に今後の展開が象徴されたり、デヴィッド・ボウイが捜査官として登場したり、といった笑えるエピソードが多くて快調。>>続きを読む

メイキング(2021年製作の映画)

3.0

映画撮影現場もの。映画の撮影は情報システムのプロジェクトに似ている。撮影完了というゴールが設定され、コストと期限の制約の中で最大限品質を上げることが求められる。プロジェクトが進行する中でさまざまな困難>>続きを読む

父と娘(2023年製作の映画)

3.0

2020年のMyFFFでエルワン・ル・デュックの監督作『ペルドリックス』を観ていた。奇矯な登場人物たちのふるまいにくすっとした笑いが込み上げるコメディだった。本作でも前半はくすっとした笑いが快調。「サ>>続きを読む

箱男(2024年製作の映画)

3.0

箱男たちの組み合いや浅野忠信の浣腸プレーに笑う。黒ずんだ段ボール箱の質感が素晴らしい。永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩一の余裕のある演技に対して、白木彩奈の扱いは昭和っぽい。

オークション 〜盗まれたエゴン・シーレ(2023年製作の映画)

4.0

感じの悪い競売人、別れてはいるけれど仕事ではパートナーの元妻、虚言癖のある見習い女、押し出しの強い女弁護士。エゴン・シーレの行方不明作品の発見というドラマチックなお話が、こうしたクセの強い登場人物たち>>続きを読む

パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

3.0

ニューヨークの荒廃した裏町はシャンタル・アケルマンが捉えたニューヨークに通じる。船上から遠ざかるニューヨークの街並みはアケルマン作品にもあった。ロートレアモンとかPTSDのヴェトナムヴェテランの描写は>>続きを読む

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)

4.0

40年ぶりの再見では、厨二病全開の数々のアイテムに笑ってしまう。妻実家のいたたまれないとか、イレイザーヘッドの生首を拾った少年が最後に礼金をもらうまでの展開とか、ドラマ仕立ての描写にキレがある。その一>>続きを読む

チャレンジャーズ(2023年製作の映画)

3.0

ゼンデイヤ、ジョシュ・オコナー、マイク・ファイストそれぞれの12年にわたる顔はよい。グァダニーノ演出は苦手。無闇に細分化したショットは本当にすべて欠かせないものだろうか。

陪審員2番(2024年製作の映画)

4.0

ニコラス・ホルトの青く澄んだ目と、トニ・コレットの射抜くような目。トニ・コレットは被告人の目を見るために拘置所で面会する。ホルトの目とコレットの目が対峙するのがクライマックス。全編で会話の切り返しが丁>>続きを読む

ライド・ロンサム(1959年製作の映画)

4.0

ランドルフ・スコットとパーネル・ロバーツが馬上で会話を続けていると、後景の遠い丘の上から先住民の追っ手が近づいてくる。二人がなかなか気づかないサスペンス。後景に目もくれないランドル・スコットがじつは追>>続きを読む

ディシジョン・アット・サンダウン(1957年製作の映画)

4.0

無精髭のランドルフ・スコットが駅馬車の車内から御者を銃で脅して駅馬車を止め、降りた後は馬で来た相棒と合流してサンダウンという町に向かう。脈絡のないオープニングで興味がそそられる。結婚式で殺害宣告した後>>続きを読む

キラーヒート 殺意の交差(2024年製作の映画)

2.0

ギリシャはクレタ島を舞台にしたお気楽サスペンス。プロットは途中で先が見えたけど、現地ロケーションによる異国情緒は楽しめる。主人公たる探偵のモノローグはPD(私立探偵)映画の伝統をほのかに継承している。>>続きを読む

最後の酋長(1953年製作の映画)

4.0

沼地映画にハズレなし。ロック・ハドソンとの再会で睦んでいたバーブラ・ヘイルが単身沼地を小舟で進み、居留地に到着すると酋長のアンソニー・クインといきなり熱い接吻を交わす。歯切れの良い展開!その後、討伐軍>>続きを読む

三重スパイ(2003年製作の映画)

4.0

ロメールには珍しく会話で切り返しが繰り返される。表情の変化やオフスクリーン音声や視線の移動などさまざまな手を使って切り返しが繰り返される。単調な印象を与えないどころか緊張感が生み出されている。会話では>>続きを読む

ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

4.0

1984年の公開時以来の再見。先日、ロングライドのポスターを入手してリヴィングの壁に提げたところだった。登場人物たちの台詞回しや場面転換で暗転する間合いが冴えている。ジャームッシュ作品で随一。「『早春>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

人物が登場する間合いとか、悪意や善意が剥き出しになるセリフは舞台劇だけど、ショットを積み重ねる表現は紛れもなく映画。ダーレン・アロノフスキー、生来の嗜好を抑えて賞取りに打って出ている。

黄金の大地(1953年製作の映画)

3.0

疾駆する馬などアクションのシャープ。また、集団による戦闘はほぼかならず斜面で繰り広げられる。これは他のベティカー作品にも通じる。冒頭で戦闘の舞台となった金鉱には水を流す樋が斜面に設置されていて、再びこ>>続きを読む

π(1997年製作の映画)

3.0

粒子の荒れたモノクロ映像に細かいカット割で描かれる妄想ワールド。主人公がスキンヘッドになってからのクロースアップには力がある。シナゴークやラビたちが示すユダヤ文化はアロノフスキー自身が親しんだもののよ>>続きを読む

征服されざる西部(1952年製作の映画)

3.0

皆が書いているとおり、いちばん印象的な場面はロバート・ライアンに殴られたロック・ハドソンが大きなテーブルの上を奥に向かって滑って落ちるところ。ライアンが荒くれ者たちの中に入っていき、殴り合いの後、仲間>>続きを読む

自由を愛した男(2024年製作の映画)

2.0

実話ベースの犯罪活劇。メラニー・ロランは監督として『ガルヴェストン』や『ヴォルーズ』のように犯罪活劇を手がけるところは好ましい。構図や斜めアングルやカメラの動きなどのスタイリッシュな、というかスタイリ>>続きを読む

ザ・バイクライダーズ(2023年製作の映画)

4.0

あたかも部族のような集団が形成され拡大し滅んでいく物語。集団リーダーのトム・ハーディ、ハーディと心で繋がっている鉄砲玉のオースティン・バトラー。この二人の厳しい眼差しに打たれる。この集団の栄枯盛衰の物>>続きを読む

シマロン・キッド(1951年製作の映画)

4.0

無駄なく簡潔なストーリー展開。拳銃を抜いたり、コップで水をかけるといった瞬発的なアクションのキレの良さ。機関車庫の立ち回りの空間把握とターンテーブルの緩慢な回転。登場人物たちがみな個性的で、中でも情報>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

4.0

充実した顔の映画。法廷映画にお約束の弁護士と検察官の駆け引きはない。法廷内ではときおり引きのマスターショットがあるほかは、女性の被告、語り部の女性作家、女性裁判官、女性弁護士、男性検察官、それに証言者>>続きを読む

ロデオ・カントリー(1952年製作の映画)

4.0

ニコラス・レイの『ラスティ・メン/死のロデオ』と同年製作のロデオもの。レイ作品と同様にロデオ乗りの先達が後輩とタッグを組む物語。レイ作品は悲劇だが、本作は明朗なエンディングを迎える。ロデオ場面を中心に>>続きを読む

クラブゼロ(2023年製作の映画)

3.0

黄色に紫のアクセントが入る制服、薄緑の校舎、パープルやブルーで統一された少女たちの部屋といった奇天烈感のある色彩設計。カルト集団が形成されるプロセスを描いているけど、当方には響かなかった。拒食がもたら>>続きを読む

シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

3.0

戦場の緊張感に取り憑かれたフォトジャーナリスト(戦場カメラマン)たちはテンプレ展開。ありふれた郊外が戦場になるしつらえは当地の人が見ると感興が湧くのだろうか。戦場場面の音響は迫力あり。ちょうど自宅のサ>>続きを読む

マリア(2024年製作の映画)

2.0

お馴染みの物語が綺麗な絵で綴られる。ノア・コーエンという俳優は表情に力のある別嬪さんだし、アンソニー・ホプキンスは楽しそうにヘロデ王を演じてはいる。