ダイヤはロシアの主要輸出品で、西側諸国は昨年初めに対ロシア制裁リストにダイヤを追加した。ウクライナでの戦争が長引く中、ロシア産の人工ダイヤや第三国で加工されたものも制裁対象に含めるなど、制裁は徐々に強化された。
だがロシアのダイヤ産業と同国最大手のアルロサにとっての真の打撃は、業界で広く見られるものと同じだ。つまり、過去5年間で人工ダイヤの価格が75%近く下がり、天然ダイヤ価格の下落幅の8%をはるかに上回っているという実態だ。
なぜダイヤの価格は下がっているのか。まず、天然ダイヤとより安価な人工ダイヤが市場に溢れていることが挙げられる。
込み入った要因もある。消費者が電子機器や旅行などへの支出を増やし、ダイヤに対する需要が減退していること、中国での販売が低迷していること、そして長年定番だったダイヤの婚約指輪がもはや必須のものと見なされなくなっていることなどが挙げられる。
英ロンドン証券取引所に上場している資源大手アングロ・アメリカンが85%の株式を所有するデビアスへの影響は、同社のダイヤの在庫が昨年末時点で20億ドル(約3050億円)相当に膨れ上がったこと、そして100年超の歴史を持つダイヤ業界のリーダーである同社の時価総額が大幅に目減りしていることから推して知るべしだ。
アルロサもダイヤ市場の変動のあおりを受けており、ロシア極北のヤクーツクにある同社の鉱山の2024年の生産量は前年比4.6%減の3300万カラットだった。これは前年の同2.8%減に続く落ち込みだ。
増えるばかりの在庫
アルロサが苦境にあることから、ロシア政府は昨年、業界を支援するためのダイヤ購入プログラムを継続することを余儀なくされ、売れ残った宝石を買い取るために15億5000万ドル(約2360億円)の予算を割り当てた。ロシア政府の声明によると、資金は「供給過剰の中でダイヤ原石の価格の安定を確保するため」のものだった。
こうしたロシア政府のコメントやデビアスのダイヤ在庫の増加から、現在の市場が業界関係者の予想よりずっと長く続く可能性があるという問題が浮かび上がる。