プレートの沈降により、海水は地球の奥へと吸い込まれていく。この事実はよく知られていたが、そのペースが予想以上に速いことが最新研究によって判明した──。
地球は「海の惑星」ではなかった?
地球には海がある。
46億年前に地球が誕生してから10億年後までには海ができ、そこで生まれた生物が、やがて陸に上がってきた。海はそんな大昔から、つねに地球とともにあった。
だが、地球には海があるものだという「常識」は、たんなる思い込みなのかもしれない。
広島大学博士課程の畠山航平(こうへい)さん、片山郁夫(いくお)教授らがこのほど発表した論文によると、海の水は、予想より速いペースで地球内部に取り込まれているという。単純に計算すると、6億年後にはなくなってしまうペースなのだ(プレスリリースはこちら)。
地球上の水は、姿を変えながら地球全体をめぐっている。海の水が蒸発し、それが雨となって降ってくる。陸に降った雨は川になって、海に注ぐ。この循環に、世界の海を旅する深層の海流を含めて考えたとしても、ひと回りするのに必要な時間は、せいぜい数千年だ。
一方で、これよりはるかに長い時間をかけた水のめぐり方もある。畠山さんらの研究は、こちらのめぐり方に関するものだ。
水を含む海洋プレートが…
地球の表面は、全体が十数枚の巨大なプレート(岩板)に分かれている。これらは互いに押し合ったり横にずれたりしていて、陸地が載っている大陸プレートの下には、それより重い海洋プレートが潜り込んでいる。
日本列島が載っているプレートの下にも、東から太平洋プレート、フィリピン海プレートが潜り込んできている。
この海洋プレートは、上面が海底なので海水を含んでいる。海水を含んだまま地球の内部に潜り込んでいくので、そのぶんだけ海の水が減ることになる。海洋プレートは、何百万年、何千万年かかって潜り込むので、こちらは時間スケールの長い水のめぐり方だ。
この海洋プレートの水の含み方を新たな実験で再考したのが、畠山さんらの研究だ。