社会学者の大澤真幸氏と、憲法学者の木村草太氏が、天皇制の過去・現在・未来をめぐって対話した『むずかしい天皇制』(晶文社)。この本の刊行を記念して、2021年6月20日に代官山蔦屋書店主催で行われた対談イベントの内容をまとめました。テーマは、大澤氏の近著『新世紀のコミュニズム』(NHK出版新書)ともからめた「資本主義と天皇制」。「資本主義の限界」が言われるなか、天皇制の持続可能性をどう考えたらよいのでしょうか?
【構成・山本ぽてと】
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天皇制は例外状態の時に出てくる
大澤 今回は私と木村さんの対談本『むずかしい天皇制』刊行を記念してお話をします。一般的な本では「すぐ理解できる!」ことを売りにしそうですが、「むずかしい」をわざと前面に出した珍しい本です。今の時代、「むずかしい」と率直に言ったほうがよいと思いましたが、実際、わりと読者に届いているようで良かったですね。
木村 ええ。今日も「むずかしい」話になるかもしれません(笑)。大澤先生の新刊『新世紀のコミュニズム』にも絡めながら、色々とお話できればと思います。
まずお聞きしたいのは、現在のコロナ禍についてどう定義しているのかです。緊急事態宣言が出される中、「コロナに打ち勝った証」だったはずのオリンピックが開かれようとしている。現在を「日常」と捉える人も、未曽有の緊急事態だとする人もいます。
今回の感染症は、民主主義体制において対応が難しい感染症なのではないかと思いました。ものすごく致死率が高いのであれば、なにがなんでも封じ込める対策をしようと意志決定の合意がしやすい。しかし、致死的な影響の出る割合が年代によって全然違うため、ただの風邪と主張する人から、極めて危険な感染症として扱う人まで様々でした。もちろん、感染症の専門家の方の多くは、封じ込めなくてはいけない凶悪なウイルスだと認定しているわけですが、国民みんなが参加する民主主義に基づく集合的な意志決定は非常に難しい。