夏休みも残り1週間ほどになった。子どもにとっては「もう」だが、1日3食を用意しなければならない親からすれば「まだ」だ。一方でせっかく時間があるのだから、子どもと一緒にお菓子づくりに挑戦したいという声もある。多くの子どもは混ぜたり、こねたりが大好きだ。きっと張り切って手伝ってくれるだろう。
どうせ作るなら美味しく作りたい。だがお菓子の多くは「混ぜすぎ」「こねすぎ」は失敗のもとになってしまう。簡単で失敗しない、子どもと作ってもおいしくできるお菓子は何がいいのだろう。
小学生の頃からレシピ本の魅力に取りつかれ、ケーキ屋さん、料理人に憧れるも、不器用で、センスも根気も足りずに断念。代わりに料理本の編集を20年以上も生業にしてきた筆者がお薦めしたいのは、マドモアゼルいくこ著『秘密のケーキづくり』の巻頭にある「ヨーグルトポムポム」だ。
公開後、Twitterなどで話題となり、絶版していた『秘密のケーキづくり』の復刊を求めるリクエストが数日間で350以上も復刊ドットコムに集まり、約12年ぶりの復刊につながった2022年3月12日の掲載の記事を再編集してお届けする。
写真のないお菓子の本
子どものころ、一番のごほうびは、お菓子作りをさせてもらえることだった。次は、何を作ろうかと、お菓子の本を広げては、わくわくしながら眺めていた。中でもお気に入りは、マドモアゼルいくこ著『おいしくて太らない 簡単で失敗しない 秘密のケーキづくり』だ。写真のない、文字とイラストだけのお菓子の本だが、著者の「ケーキ作りが好きで好きでたまらない」思いが伝わり、どのお菓子も「読んでいると食べたくなってしまう」のだ。
バターもクリームもいらないケーキ
この本のレシピは、とにかく作りやすい。高価で固いバターではなくマーガリンを使ったり、クリームチーズを裏ごししたり、砂糖をふるう必要はなし。紹介されている多くのお菓子が、家にある安価な材料をレシピ通りに混ぜていくだけで出来上がる。
中でも、中学生の頃に初めて作って以来、デザートを切らした日や、りんごやヨーグルトを使い切りたい時にと、かれこれ200回近く作ってきたのが、「ヨーグルトポムポム」だ。卵、砂糖、サラダ油、ヨーグルトを混ぜ、粉とベーキングパウダーをふるい入れた生地に、薄切りにしたりんごをのせて焼く。お菓子作りに出てくる「固いバターをクリーム状になるまで混ぜたり」「卵を湯煎にかけてフワッとするまで泡立てたり」といった面倒な作業が何もない。材料を混ぜるだけでできる超簡単レシピだ。