著書『年収443万円』では、ある保育運営会社の本部に転職した男性(48歳)が管理職として採用されたが、転職前の年収800万円から520万円にダウン。「社長と社長の取り巻き連中の役員だけ報酬が高く、ほとんど仕事をしていない。保育士の待遇改善などについて社長に物申した幹部は、賃金を25%カットされる始末でした」と嘆いていた。
また、これまでの取材で数多くの保育士から「あんなに立派な本部が必要なのだろうか」「本部の経費はどこから出ているのだろうか」「次々に保育園を作る資金に保育士のための人件費が回ってはいないか」という疑問の声が聞こえていた。
筆者は機会のあるたびに事業者に対し、各保育園からいくら本部に運営費を流用しているかの取材を試みたが、回答する事業者はなかった。そこで今回、筆者が東京都に情報開示請求を行うと、保育運営会社が本部経費として都内の認可保育園からいくら運営費を回したのかという実態が、初めて明らかになった。
本部経費13億円、本部は東宝日比谷ビルに
本部経費13億8823万円――。
これは、都内を中心に「さくらさくみらい」保育園を86ヵ所展開する「さくらさくみらい」社の2021年度の本部経費の金額だ。
東京都から開示された文書に記載されていた数字を見ると、同社の本部経費は2020年度で10億5974万円、2021年度は13億8823万円に膨らんでいる。
一般的に“保育園の本部”といえば、どんなところを想像するだろうか。
さくらさくみらい社の本社は、都内・有楽町駅から徒歩で数分。近くには帝国ホテル、ペニンシュラ東京などがある一等地にある。TOHOシネマズ日比谷・シャンテ、東京ミッドタウン日比谷など人気の商業ビルに隣接する東宝日比谷ビルにオフィスを構える。
株式を上場している「さくらさくプラス」が持ち株会社の親会社となり、連結子会社の「さくらさくみらい」社が保育園を直接運営。不動産会社などを含め5社の連結子会社と持分法適用関連会社が2社のグループ経営となる。