「ChatGPT」の次にOpenAIが仕掛ける「世界革命」...アルトマンCEOが主導する「UBI」とは

「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」

そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。

本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。

『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第27回

「海岸のゴミ」が「カネ」に変わる⁉...新しい「人間関係」を提供する鎌倉発祥の「地域通貨」の衝撃の実態』より続く

一人一株

英ケンブリッジ大などで教壇に立った経済学者で、2015年の債務危機の最中にギリシャの財務相として欧州連合(EU)などとの債務削減交渉に当たったヤニス・バルファキス(62)が書いた『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』は異色のSF小説だ。

主人公の天才エンジニアがある日、2008年のリーマン・ショック後に枝分かれしたパラレルワールドへの通信手段を発見することから話は始まる。その世界では株式市場も商業銀行も存在しない。

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資本主義の世界では、株主は株の持ち分に応じて企業の重要な決定に関する発言権を持ち、株は原則自由に売り買いできる。だがここでは、社長もその秘書も全員が一人一株のみを持ち、社員の採用や解雇、報酬の額など、すべての意思決定を平等な投票で決める。株の取引は選挙権や子どもを売買するのと同じくらい不道徳とされる。

突拍子もない空想のようだが、これらは実在の企業に着想を得たという。資本主義以外の選択肢は考えられないと主張する登場人物に対し、主人公は「かつては王権神授説もそうだった」と反論する。