AI(人工知能)技術の普及が進む中、関連する電子部品市場にも恩恵が期待できよう。生成AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の進化により、データセンターやAIスマートフォン、AI搭載PC(AIPC)など、新たな技術や製品の浸透率は加速度的に進んでいる。搭載される電子部品の需要拡大にも弾みがつきつつある。
この分野で日本企業は大きな存在感を示している。グローバル出荷額では中国に大差をつけられての2位に甘んじているが、技術水準では世界市場をリードする地位をしっかりと確立している。自社営業を通じて顧客ニーズを迅速かつ細やかに把握し、技術開発へ結びつける能力の高さは、日本企業の強みといえよう。
多くの先進国で生産年齢人口がピークアウトへ向かう中、今後は企業の投資がAI分野に集中する可能性は高い。生産性を高めるため、車や産業機械にもAI搭載は進むとみられ、AI向け電子部品でリードしている企業の優位性はさらに高まっていきそうだ。
TDK(6762)
■株価(1月24日時点終値)1926円
中期経営計画では、2027年3月期までの3年間でフリーキャッシュフローを2600億円生み出す計画を掲げている。前回の中期経営計画と比べて約7割増という大幅な伸びとなる。目標達成に向けては、投下資本利益率(ROIC)10%超えが期待できる成長事業に戦略投資を集中させる方針を掲げている。その中心となりそうなのがエッジ端末向けの電子部品だ。
パソコンやスマートフォンなどに生成AI機能を直接搭載する「エッジAI」の市場拡大が始まったことで、TDKのセンサー技術は工場設備の予兆保全など多岐にわたる活用が期待できる。また、スマートフォンやパソコンの新製品端末への買い替え需要が刺激されることで、高収益を誇る受動部品や二次電池などの需要拡大も見込めよう。
エッジAI市場の本格普及期は2025年以降と予想されており、今後は既存製品から新製品への代替が進むとみられ、業績がさらに拡大することが期待できる。また、データセンター向けの旺盛な投資を背景とするハードディスクドライブ(HDD)の世界生産台数にも上積み余地があるだろう。