クスリも女も買いたい放題、カジノではカモられて当たり前…東南アジアの中華系「闇の都」に潜入してみた

安田峰俊さんが東南アジアに広がる「中国の闇社会」を追った連載第2回。好評を博した第1回はこちら!

『出てくるヤツら、全員悪人…私はいかにして、東南アジアの「中国人アウトロー」と仲良くなったか』

中国人の欲望が集う「闇の都」

「やべえ! 邪悪だ! これは邪悪だ!」

思わず叫んだ。2025年2月25日、ラオス北部のボケオ付近にある金三角特区(ゴールデントライアングル特区)での話である。時刻は夜。街の中央に位置する中国資本の超豪華カジノホテル・金木綿酒店が、私の目の前で紫色のぶきみな光を放っていた。

駐車場にはマンガでしか出てこないようなリムジンと、スーパーカー風の高級電動バギーがずらりと並んでいる。ホテルの前には、営業中の広大なナイトプールが広がり、どこかの金持ち中国人女性が優雅に水面をたゆたっていた。 

「これでも最近は景気が悪いんだ。中国政府が中国盤(中国国内がターゲットの詐欺)を禁止したし、いまはミャンマー東部の拠点がガサ入れ食らってるだろ? カジノでカネを使う客が減っていてな」

私を案内してくれている「悪い人」がそう話す。彼は東南アジアに国境をこえて広がる中国人の暗黒社会(中華暗黒ベルト)のなかで、民主派閥に近い立場のアウトロー兄貴の一人だ(以下、暗黒兄貴)。なぜ彼が私の「仲間」になっているかは前回の記事で書いた。この暗黒兄貴は、本人も某近隣国でオンライン詐欺産業に関与していた当事者なので、話は信憑性がある。

いっぽう、すこし景気が悪いのは事実らしかった。金木綿酒店内のカジノに入ると、ゴージャスな内装に比して客はややまばらだ。なお、カジノは大きな体育館以上の面積があり、ホールにトランプ系賭博、さらに周囲にスロットマシンがある形式である。

ここはラオス領だが、通用しているのは中国の人民元だ。しかも、中国本土で一般化しているウェブマネー(アリペイなど)ではなく、用途のアシがつかない現ナマである。フロア内は全面喫煙可能で、水で湿らせたキッチンペーパーを敷いたガラス灰皿が卓ごとに置かれていた。ラオスは電子タバコが違法なこともあるが、なにより中国の「悪い人」たちは、ガッツリ重い紙巻きタバコを吸ってなんぼなのである。

カジノ内部は撮影禁止なので、表のロビーにて。ムダに豪華だ!(筆者撮影、以下同)
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ゴージャスな雰囲気を出すためか、ホールのあちこちに樹木を模した照明が備え付けられていた。だが、よく見ると枝の多くに監視カメラの「実」がついている。イカサマを見張るためだろう。

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