2012.05.01

ネット人口5億人超の中国で「ジョブズ」が生まれない理由 

フィナンシャル・タイムズ(UK)より CHINA
中国のインターネットユーザー数の推移

 いまや人材、資金力のいずれも米国に迫る勢いの中国だが、世界を変えるようなアイディアが生まれないのはなぜなのか。

 中国ではいま、ITベンチャーが次々に登場しており、米国のシリコンバレーにも勝るとも劣らない勢いがある。しかし、その中国で、アップルのスティーブ・ジョブズやフェイスブックのマーク・ザッカーバーグに匹敵するような起業家は生まれていない。それはいったいなぜなのだろう。

 中国のインターネット人口はすでにEUの人口に匹敵する5億人余りに達している。だがそこで毎日生まれているのは、米国で生まれたアイディアの模倣によるビジネスばかりなのだ。たとえば、「百度」はグーグルのコピーだし、「人人」はフェイスブックの真似。グルーポンの〝クローン〟に至っては、5000以上もある。

 米国の起業家なら、何よりもアイディアを大切にする。米国では、優れたアイディアがなければ市場を獲得することはできないからだ。起業家の多くは大学をドロップアウトしてまで、ビジネスの中核となるアイディアを育て、広めることに没頭する。儲かるかどうかは二の次だ。

フィナンシャル・タイムズ(UK)より

 一方、中国の起業家たちが目指すのは、まず何より収益だ。13億人の巨大なマーケットのなかでは、他人の模倣であってもビジネスとして成立する。そして、大学を出て、企業で経験を積んだ末に独立した彼らは、そのことをよく知っている。

 そんな彼らにとって、イノベーションは最重要課題ではない。アイディアより利益を優先するやりかたでは、新しいものは容易に生まれないだろう。

 中国のある動画サイトの経営者はこう話す。

「米国で生み出されているサービスは中国人も必要としていて、新しいものを作るよりコピーしたほうが早くニーズに応えられる。スマートでいることより、一番になることが大事なんだ」

COURRiER Japon

2012年5月号
(講談社刊、税込み780円)発売中

amazonこちらをご覧ください。
楽天
こちらをご覧ください。

関連記事