活用に向けて議員立法化の動き
国内金融機関に推定500億円 社会福祉の財源案も[休眠口座]
銀行に預けたまま長期間取引がない休眠口座を活用しようという議論が再び活発化してきた。活用については、民主党政権下で「成長マネー」の供給源として閣議決定されたものの、具体策が決まらないまま政権交代があり、議論も〝休眠状態〟になっていた。しかし、ここに来て自民、公明両党の有志議員を中心に、議員立法化に向けた動きが本格化してきた。今国会中に成立させたいとしているが、資金の受け皿や活用方法などについても思惑も絡み、なおハードルも多いようだ。
預け入れ、払い戻しがなく金融機関に放置された口座については、銀行は商法で5年以上、信用金庫などでは民法で10年以上経過すると時効となり、権利が消滅することになっている。また、定額、定期郵便貯金の場合は、満期後20年が経過し、催告書発送後2カ月がたっても払い戻しの請求がないと権利は消滅する。
だが、多くの金融機関では、10年以上取引がなく、連絡がとれないものを休眠口座扱いとしているが、実務面では預金者からの請求があれば、払い戻しに応じている。ただ、金融機関にとっては、休眠口座をそのまま管理するだけも経費がかり、残高が少額だと費用負担割合も大きい。このため2年以上取引がない普通口座を休眠口座扱いにし、1万円未満の普通口座には年1200円の管理手数料を引き落とし、残高がなくなった時点で解約とする銀行もある。
休眠口座は、転居や結婚などで新しいところで口座を開設したため、元の口座はその後に払い戻しに出かける交通費がかかることからそのままにしていたり、残額が少なくてATMやCDで引き出せなくなったケース、金融機関の統廃合や移転で近くに支店がなくなり取引をやめたことなどさまざまな理由で発生する。また、通帳や印鑑、キャッシュカードを紛失し回復の手続きが面倒なためにずっと放置したり、名義人が亡くなり相続人が口座を知らなかったり、相続したことを証明することが複雑なためにそのままになったしまったということもあるという。
休眠口座の活用について、英国では15年間以上取引のない口座を対象に、新たに設立した請求基金が管理し、社会福祉事業などに利用している。米国では州で異なるが休眠期間3~7年程度の預金を州政府が管理し、一般財源に組み入れている。韓国では金融機関の形態で2~10年以上を休眠口座として休眠預金管理財団が管理し、基金として社会福祉事業などに利用している。ただ、韓国では預金者から財産権の侵害とする訴えがあり、活用はストップしているという。また、カナダでは、休眠期間10年以上の口座をカナダ中央銀行に移管し、中央銀行が管理するシステムになっている。
日本では、休眠口座の預金を会計上、利益として計上し、各金融機関で保管してきた。活用を検討するために民主党政権時の国家戦略室がまとめた10年3月末を基にした推計データでは、銀行等の金融機関で約1300万口座、約850億円が毎年発生し、休眠1口座あたりの平均額は6500円だった。このうち払い戻しがあったのは約75万口座(約6%)、350億円(約40%)で、払戻額の平均は4万7000円だった。農漁協系金融機関では58万口座、約24億円発生し、約4万口座(約7%)、6億円(約25%)の払い戻しがあり、休眠口座の平均は4100円、払戻額の平均は1万5000円という。