
EUの亀裂が浮き彫りに
12月17日と18日、ブリュッセルで、今年最後の欧州理事会が開かれた。
欧州理事会というのはEUの最高意思決定機関である。通常、欧州サミットと呼ばれ、ここで、EUの進む方向や案件の優先順位といった大枠が決められる。今回の議題は、主に以下のような事柄だった。
・EUの国境防衛
・イギリスが出してきているEU改革案
・テロとの戦い
・対ロシア制裁の延長
・エネルギー政策
しかし結局、どれも紛糾し、EUの亀裂を浮き彫りにしたままお開きとなった。
欧州議会のシュルツ議長は、彼の40年にわたる政治生活の中で、今年ほど困難な年はなかったと言い、各紙の報道にもおしなべて、「ヨーロッパ存続についての憂慮」や「EU耐久テスト」など、悲観的なタイトルが躍った。
2015年のEUを振り返ると、確かに波乱万丈であった。前半はウクライナ東部での戦闘が激化、ドイツやフランスの取持ちで結ばれた停戦協定はすぐに破られ、バルト3国やポーランドは緊張し、戦闘がEUを巻き込んでいくのではないかという不安が漂った。
そうするうちに、今度はギリシャの金融危機がいよいよ焦げ付き、6月のニュースはギリシャ一色。一時は、ギリシャのユーロ圏離脱がかなり現実味を帯び、EUの首脳はそれこそギリシャ救済に掛かりっきりになったのだった。
ギリシャの金融危機は、EU内に数え切れないほどのひび割れを作った。ドイツが推し進めた危機マネージメントのやり方がギリシャ人の憎しみを買い、そのしこりは未だに消えていない。2015年は、いい意味でも悪い意味でも、ドイツがその力を世界中に見せつけた年とも言えるだろう。
8月からは、EUをさらに大きな問題が襲った。難民だ。難民問題は以来4ヵ月、ひたすら混乱の度を深めている。「EUの連帯」という言葉はうるさいほど飛び交っているが、実体としての連帯はすでにない。各国はいがみ合い、解決策は見つからない。金融危機で発生したひび割れはさらに大きくなり、EUは粉々に割れてしまうかもしれないと、皆が危惧し始めた。