筆者は、前回『IT業界にとって「サマータイム」は無謀どころか、もはやテロである』という記事を寄稿した。そこでは「サマータイム」の緊急導入案を、政府主導の愚策例として挙げたが、それだけではない。
既に政府による、国民のモチベーションや生産性を下げる、悪しき間接業務が野放しにされ、むしろ増やされてすらいる。
「確定申告」という名の罰ゲーム
「今年もまた憂鬱な季節が来た。あの膨大な事務作業行事をしなければならないかと思うと、お正月明けからブルーになる……」
都内でフリーランスの英語講師業を営むN氏。彼女はため息混じりにこう語る。
その憂鬱な事務作業行事とは何か? そう、「確定申告」である。
確定申告は、一定の収入が発生する全国民に義務付けられる納税のための事務作業である。
率直に言って、生産性もモチベーションも大きく下げる「仕事のための仕事」の典型だ。この「やらされ感」しかない事務手続きと、その準備が毎年概ね2月〜3月、多くの国民を苦しめている。
その期間、当然本来の業務はストップする。過去の領収書などを保管しておく労力も馬鹿にならない。加えて、この労働には対価が支払われない。ある意味、タダ働きよろしく「ブラック労働」なのである。
しかも、その手続きは煩雑かつ難解。申告書類やWebの申告画面を目の前にして、
「どこに何を書いたらよいのか分からない」
「言葉の意味が不明」
「……えっ。いまさら言われたって、そんな書類とっておいてないんですけど」
このように途方にくれる申告者が後を絶たない。
多くの一般人は日々、税のことなど気にして生きているわけではない。
「これくらい分かって当然」。そんな税務関係者目線のマニアックな常識を押し付けられても困る。そのリソースを、他のことに使いたい。
とりわけ気の毒なのが、悪気なく申告対象者になってしまった人だ。
最近、個人が雑貨や同人誌を作ってイベントなどで販売する動きも高まってきた。儲けのためではなく、自己実現や人生を豊かにするためにやっている人もいる。そういう人が、確定申告の時期になって落胆する。
「これ、何の罰ゲームですか!?」