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ギャンブルで情報や偏見を正しく利用するベット配分戦略「ケリー基準」


ギャンブルにおいて情報や偏りを正しく利用するための戦略が「ケリー基準」です。1956年にベル研究所の研究者だったジョン・ラリー・ケリー・ジュニアが提唱したケリー基準について、データサイエンティストのジョン・マウント氏が解説しています。

Kelly Can’t Fail – Win Vector LLC
https://win-vector.com/2024/12/19/kelly-cant-fail/


マウント氏はピーター・ウィンクラー氏の著書である「とっておきの数学パズル」で登場する「Next Card Bet」というカードゲームを利用して、ケリー基準について説明しています。

「Next Card Bet」の遊び方は以下の通り。

1:ジョーカーを除く52枚のカード(赤26枚、黒26枚)を用意して、シャッフル。
2:プレイヤーは1ドルの賭け金でゲームをスタート。
3:ゲームではカードをデッキから1枚公開するので、プレイヤーはこのカードが赤か黒かを予測して賭けます。一度場に出たカードがデッキに戻ることはありません。賭け金の配当は1対1です。


このゲームでは場に出たカードが赤か黒かを数えることで、赤と黒のどちらに賭けるべきか戦略を練ることが可能です。例えば、最後のカードまで賭けを行わないと決めておけば、安全に賭け金を2倍にすることができます。

ケリー基準は、賭け金の期待値を最大化するような賭け方を選ぶ戦略です。山札に残っている赤のカードの枚数を「r」、黒のカードの枚数を「b」とすると、賭け金の割合(bet_fraction)の関数「P[赤を引く]×log(1+bet_fraction)+P[黒を引く]×log(1-bet_fraction)」が最大化するのは、導関数がゼロになった場合です。


赤カードを引く確率は「r/(r+b)」であるため、「(r/(r+b))/(1+bet_fraction)-(b/(r+b))/(1-bet_fraction)=0」を解く必要があります。代数計算により、「bet_fraction=(r-b)/(r+b)」となるため、ケリー基準に基づき「Next Card Bet」をプレイする際の賭け方は以下の通りになります。

・「r=b」ならベットしない
・「r>b」の場合、|r-b|/(r+b)を「赤」に賭ける。
・「b>r」の場合、|r-b|/(r+b)を「黒」に賭ける。


最後のカードで確実に赤カードか黒カードかを当てた場合、賭け金は「2倍」になります。しかし、ケリー基準に基づき賭けを行うと、複数回の試行で賭け金を平均「9.08倍」にすることができたそうです。ケリー基準は「破産しないこと」(手持ちのお金をすべて失うこと)と、賭け金の対数の期待成長率を最大化することを保証する戦略ですが、通常それ以上のことを保証するものではなく、実際には損失を被る可能性もある点には注意が必要です。

ケリー基準に基づいて「Next Card Bet」を遊ぶと、基本的にプレイヤーは多数派の色に賭けることとなり、賭けに負けるたびにデッキは不均衡になり、その後の賭けが有利になっていきます。賭け金を十分に小さくすれば、賭けに勝った際の収益が負けた際の損失を相殺してくれるため、負けがなくなるわけです。ケリー基準は情報や不確実性に適切な価格を設定するため、「A/Bテストの探索と活用のフェーズのよう」とマウント氏は指摘しています。

なお、マウント氏が解説したケリー基準に関する詳細はすべて「とっておきの数学パズル」に記載されているもので、さらなる詳細を知りたい人や、その他の数学的問題について知りたい人に、同著を読むことを強く推奨しています。

Amazon.co.jp: とっておきの数学パズル : ピーター ウィンクラー, 坂井 公, 岩沢 宏和, 小副川 健: 本

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in メモ, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article The Kelly Criterion: A bet allocation st….