クモをマインドコントロールし「ゾンビ化」させる新種の寄生カビが洞窟の天井で発見される

by Evans et al., Fungal Systematics and Evolution, 2025
自然界には、アリに寄生して行動を変化させ、胞子をばらまくのに都合がいい場所で死ぬよう仕向ける寄生カビが存在しており、ドラマ化された人気サバイバルホラーゲーム「The Last of Us」のテーマにもなりました。同様に、本来は物陰に潜んでいるクモに寄生し、開けた場所に誘導する新種の菌が発見され、論文として発表されました。
The araneopathogenic genus Gibell...iders (Metainae: Tetragnathidae): Ingenta Connect Fast Track Article
https://www.ingentaconnect.com/content/wfbi/fuse/pre-prints/content-f1_fuse_vol15_art7
'Zombie' spiders infected by never-before-seen fungus discovered on grounds of destroyed Irish castle | Live Science
https://www.livescience.com/animals/spiders/zombie-spiders-infected-by-never-before-seen-fungus-discovered-on-grounds-of-destroyed-irish-castle
Scientists Discover a Fungus Turning Spiders Into Zombies : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-discover-a-fungus-turning-spiders-into-zombies
今回発見された新種の寄生カビは、クモに寄生するGibellula属の菌で、アイルランドの自然保護区であるキャッスル・エスピーで行われていたテレビ番組「Winterwatch」の撮影中に見つかったもの。
2021年、廃棄された火薬庫跡で取材を行っていたBBCのテレビクルーらは、天井にカビで覆われたクモの死骸が貼り付いていることに気がつきました。

by Evans et al., Fungal Systematics and Evolution, 2025
サンプルを受け取った非営利団体・CAB Internationalの研究者らが菌の分析を行ったところ、これまで同定されたことがない新種であることが判明し、研究者らはイギリスの動植物学者で、BBCの自然番組の名物ナレーターであるデイビッド・アッテンボロー卿(Sir David Attenborough)に敬意を表して「Gibellula attenboroughii」と献名しました。なお、当初は火薬庫で見つかったことにちなんで「Gibellula bangbangus」と名付けられる予定だったとのこと。
Gibellula attenboroughiiの犠牲になっているのが見つかったMeta menardiなどの洞窟性のクモは、いずれも待ち伏せ型の捕食者で、普段は物陰に潜んでじっと獲物を待ち、巣の外を出歩くことはほとんどありません。
ところが、Gibellula attenboroughiiに感染したクモはどれも、天井や壁面の開けた場所で死んでいました。

by Evans et al., Fungal Systematics and Evolution, 2025
これは、ブラジルの大西洋岸熱帯雨林に生息するオフィオコルジケプス科の菌に感染したアリの行動と非常によく似ています。
研究者らは論文に「Gibellulaに感染したクモが生息地の天井などの目立つ場所で発見されるという事実は、おそらく菌類によって操作されて行動が変化したことを意味しています。胞子形成中の死体が、洞窟内を循環する空気の流れにさらされることにより、乾燥した胞子の放出やその後の生態系全体への拡散が促進されるのでしょう」と記しました。

by Evans et al., Fungal Systematics and Evolution, 2025
クモの死体から生える子実体の見た目は多種多様で、これはおそらく生育場所の光の加減や風量などの環境的な要因によるものではないかと考えられています。

by Evans et al., Fungal Systematics and Evolution, 2025
論文の筆頭著者であるハリー・エバンズ氏によると、地球上に生息する菌類のうち、人間が発見したものは全体の1%にとどまっているとのこと。Gibellula attenboroughiiは抗生物質を生成してクモの死骸をミイラ化させ、腐敗しないように保存しており、こうした新種のカビから見つかる抗生物質の中には医薬品に応用できるものもあると期待されています。
エバンズ氏はサイエンス系ニュースサイトのLive Scienceに、「菌とクモの関係は興味深いものですが、この研究分野の最終目標は抗生物質やその他の物質から得られる人間用の医薬品です。1000万から2000万種がいると推測されている未発見の菌類は、新薬の宝庫なのです」と話しました。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1l_ks
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