キーポイントは小学1年。基礎固めを徹底して
年長から家庭学習をスタート
――ベリーさんはお子さんの学習サポートで、心がけていらっしゃることはありますか?
ベリーさん:都内で4人の子どもを育てているので、教育費をかけすぎないよう工夫しています。家庭学習に力を入れていて、塾には通わないスタイルで10年ほどやってきました。
小学1年になったときに「自分は勉強ができる」と思えたら、勉強が楽しくなって自分で学ぶようになると考えているので、わが家では年長から家庭学習を始めています。
――どのように進めていらっしゃるのでしょうか?
ベリーさん:隂山先生の「はじめての~シリーズ」を使って、無理せず、ひらがなやカタカナを自由に読み書きできるようにしています。小学1年の段階では、たしざん、ひきざん、くりあがり、くりさがりの4冊と、ひらがな・カタカナの習得ができれば十分だと考えています。
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最初につまずくのはくり下がらないひき算
――隂山先生、子どもたちは1、2年のどこでつまずくのでしょうか。
隂山先生:色々と調べていく中で、小学3年生以降に目立つ学力の課題は、小1や小2の時点での学び方に問題があるのがわかってきました。その経験から、このシリーズは子どもたちが最初につまずかないように、基礎をしっかり固めるための鍵だと思っています。
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隂山先生:子どもが計算でつまずく最大の理由は、「くり下がらないひき算」です。例えば、「7 + 8=15」を求める場合、まず「8にいくつ足せば10になるか」を考えますが、これは実際に「10 – 8」をしています。
その後、7のうち2をくり上げ用に使い、残りの5を加えて「15」を導きます。このように、くり上がりの計算ではひき算のスキルが必要ですが、多くの子どもがここでつまずき、計算全体を難しく感じてしまいます。
くり上がりが苦手な子どもにその練習ばかりさせると、ひき算の基礎ができていないため、苦手意識が強まり、算数全体を学ぶ意欲を失う原因になります。
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隂山先生:小学1年、2年生の学びは理屈ではダメ。代わりに子どもたちは、大人がかなわないような「まるごと吸収する力」を持っています。だからこそ、小学校入学前から「はじめての計算シリーズ」を使って、計算の基礎をしっかり身につけてほしいですね。
隂山ドリルは、文字が書きやすく、消しやすい
――みなさん、不安なく小学1年を迎えられたのでしょうか?
ベリーさん:小学2年の息子は、保育園の時、運筆が苦手だったので、鉛筆を持つところからスタートしました。最初はひらがなやカタカナを書くのもすごく嫌がったんです。
――どうやって克服したのですか?
ベリーさん:できなかった文字だけを何度か指で練習して、その後、鉛筆で1、2回描く練習をしました。すると、漢字が上手に描けるようになったんです。今では漢字を書いたり、読んだりするのがとても楽しいようです。
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――鉛筆を持つのに慣れて、抵抗がなくなったのですね。
ベリーさん:そうですね。ドリルへはどんどん書き込みます。進み具合が一目でわかるので、子どもも楽しいようです。子どもにとって、紙質も重要なので、それも選ぶポイントにしています。少しざらざらした紙のほうが鉛筆が滑りすぎないので、小さい子どもでもしっかり書けて、消すのも簡単。鉛筆に慣れていなくても、スムーズに使えます。
隂山先生:ベリーさんがおっしゃるように、小1を制する視点が大切だと思います。学校でも良い教育を目指すなら、エースの先生を1年生に配置して、とことん基礎を固めるべきだと言われているくらい、1年生の過ごし方は大切です。
長女の苦手意識を百ます計算で払しょく
――先を見据えてお子さまをサポートしていらっしゃるベリーさんですが、大変だったことはありますか?
ベリーさん:中1の長女が小学生の頃です。中学で学年トップ、算数、数学が得意だった長男と同じように、長女も基礎が終わったら、応用問題の問題集に進んだんです。
ところが解けない。親が躍起になって教えましたがうまくいきません。次第に長女は、算数に苦手意識を持つようになりました。
ベリーさん:そこで、基礎に戻ったんです。できることをすぐに引き出せるように基礎問題を繰り返し繰り返し……。百ます計算は6年になっても毎日1ページさせました。今では、高校1年の長男よりも長女の方が百ます計算のタイムが早いんですよ。
隂山先生:ベリーさんの機転は素晴らしい。多くの人は難しい問題を出して子どもを賢くしようとしますが、それでは逆効果です。頑張るほどに子どもの自信を失わせ、かえって苦手意識を持ってしまうんですね。これを取り除くのは本当に大変。基礎の次は盤石の基礎です。
家庭学習は〝追い越し学習〟で楽しく
――どうやって家庭学習をサポートしているのでしょうか?
ベリーさん:私は平日、仕事をしているので、夕飯を作っている間や、夕飯前の短い時間を使って子どもの勉強を見ています。特に、就学前や1年生のときは気を付けていました。
今でも漢字の練習をしているときはしっかり見て、時間がないときでも〇つけはするようにしています。「お母さんが帰るまでに進めておこうね」と声をかけると、毎日決まった量をやる習慣がついてきました。
――どのように進めましたか?
ベリーさん:2月か3月頃から次の学年の準備を始めます。勉強は、効率よく反復するのが大切。必要に応じて、同じ教材を2冊買って2周することもあります。その中でつまずく単元があれば、前の学年の該当する単元に戻って復習。しっかりと基礎を固めています。
隂山先生:私の著書「たったこれだけプリント」は、もともと復習用に作られたものでした。しかし、一部のお母さん方がこれを予習に使い始め、2周、3周と繰り返し学習して次の学年が始まる頃には内容をほぼマスターしているお子さんが増えてきたんです。
これを私は「追い越し学習」と呼んでいます。先取り学習とは違い、無理に進めるのではなく、自然な形で学びを追い越していくスタイルなので、楽しく学べます。ベリーさんのマネジメント力をみなさんもぜひ参考にしてほしいと思います。
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お話を聞いたのは・・・
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1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。
取材・文/黒澤真紀