あの株はいまいくら?

第51回 インターネットによる教育サービス提供の「学びエイド」 エドテック関連として成長期待はあるものの

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は学びエイド(184A)をみていきます。


同社の教育デジタル事業の主なサービスは、「学びエイド」、「学びエイドマスター」、「学びエイドマスターforSchool」、「学びエイドforEnterprise」、「学習塾」となっています。主なサービスの内容は以下のとおりです。



このうち「学びエイドマスター」、「学びエイドマスターforSchool」、「学びエイドforEnterprise」の3サービスで売り上げの99.0%(24.4期時点: 決算説明資料より)を占めています。


公開規模の小ささに加え、約1カ月ぶりのIPOとなり後続も1週間以上空くという需給面の追い風もあり、堅調な初値が期待されていました。では、学びエイドの株価の動きをみていきます。



学びエイドの株価推移(上場から2024年12月6日まで)

2024年5月28日に東証グロースに上場した同社の初値は1282円と公開価格970円を大きく上回りました。初値形成後に1300円まで上値を伸ばしたもののその後は失速し、上場初日の終値は1140円と初値を下回りました。

上場2日目は前日終値を下回ってスタートしたものの、切り返して上値を伸ばし一時1410円まで上昇。この上場2日目の高値1410円が上場来高値(2024年12月12日時点)となっています。


その後軟調な展開が続き6月4日には終値969円となり、1000円の大台割れとなりました。そして800円台まで下落したタイミングで、上場後初の決算発表を迎えます。


2024年6月16日に発表した決算では、24.4期通期の営業利益は1億4600万円(前の期比31.3%増)となり、上場時点の会社予想1億4300万円を小幅に上回りました。そして、25.4期通期の営業利益予想は2.0億円(前期比37.3%増)と大幅な増益見込みとしました。


この決算発表を受けて、株価は上昇基調となり、1000円の大台回復。さらに6月24日には初値1282円を上回る1317円まで上昇しました。しかし、ここから急失速となります。6月25日から9日続落となり、800円台まで下落。その後は一時500円台まで下落するも切り返し、結局600~800円程度での株価推移が続くことになりました。そして、上場後2回目の決算発表を迎えます。


9月13日に発表した25.4期第1四半期の営業損益は8200万円の赤字となり、売上高は5200万円と、前年同期の1億円弱を大きく下回りました。売り上げについて同社は「学びエイド forEnterprise 」サービスの伸長により、下期偏重の傾向があるとしていますが、ここまでの減収となると、業績の先行きが不安視されます、


この決算を受けて株価は急落。その後800円台まで切り返す局面はありましたが、徐々に水準を切り下げ、11月21日には527円まで下落。これが上場来安値(2024年12月12日時点)となっています。なお、12月に入り株価は500円台後半で推移しています。


【学びエイドの週足チャート(上場から2024年12月6日まで)】


今後について

25.4期第1四半期の決算は厳しい結果となりましたが、「学びエイドマスター」と「学びエイドマスターforSchool」は前期から減収傾向です。

具体的には、「学びエイドマスター」の売上高は23.4期:2億0080万円→24.4期:1億4550億円、「学びエイドマスターforSchool」の売上高は23.4期:1億3110万円→24.4期:9760万円となっています。


したがって、1Qの売り上げ低下は会社の想定の範囲内である可能性があります。受注時期が下期に偏る「学びエイド forEnterprise」が順調に拡大すれば、下期の巻き返しも不可能ではないと思われます。


懸念としては、売上原価や人件費の増加です。今期は事務所増床(移転)や人材採用などの投資に関しては積極的に行うとしていますが、会社予想に売上原価や人件費の増加が十分に織り込まれていない可能性があります。固定費を中心としたコスト増はあらゆる業種が直面している問題です。楽観視せず、少し厳し目にみておくくらいがちょうどよいと思います。


加えて、東証グロースの上場維持基準のひとつ「流通株式時価総額:5億円以上」を満たせなくなることが懸念されます。これは、同社の公開規模がそもそも小さかったことに加え、株価が低迷していることが要因です。


発行済み株数224万8100株から、広政愁一社長および鈴木健一取締役の保有株の合計129万0300株(2024年4月30日時点)を差し引いただけでも、95万7800株×595円(12月11日終値)≒5.6億円となります。

さらに、資本業務提携先である共同印刷の持ち株7万株も流通性の乏しいと判断すれ場合は、88万7800株×595円(12月11日終値)≒5.2億円となります。この場合、株価が563円以下となると5億円を下回ってしまいます。


下期にかけて会社計画通りに売り上げ、利益ともに積み上げることができれば、株価も上昇が期待できます。一方で、会社が想定したほど売り上げが伸びず、さらにコスト増が続いた場合は、株価下落に加え上場維持基準を満たせなくなるリスクも出てきます。エドテック関連として成長期待はあるものの、いまのところは様子見がよいと考えます。




この連載の一覧
第51回 インターネットによる教育サービス提供の「学びエイド」 エドテック関連として成長期待はあるものの
第50回 スキンケア商品・美容家電などの企画・開発・販売の「Aiロボ」 業績堅調も上場来安値更新
第49回 物流の安全に関するコンサルティングの「アスア」 決算発表後の上昇で流れ変わるか?
第48回 「らぁ麺はやし田」など運営の「INGS」 期待はく落で下落はチャンス?
第47回 ドローンベンチャーの「ブルーイノベーション」 来期の黒字転換期待が高まれば・・・
第46回 IoTプラットフォーム「SORACOM」展開の「ソラコム」 26.3期以降に成長を加速できるかが注目点
第45回 若者向けアパレルブランド展開の「yutori」 株価推移に特徴あり
第44回 スキマバイトサービス運営の「タイミー」 初値超えで視界良好か
第43回 スペースデブリ除去の「アストロスケール」 株価は右肩下がり続くが
第42回 製造業界向けAIベンチャーの「VRAIN Solution」 自動化・DX化ニーズの取り込みに期待
第41回 ECプラットフォーム運営の「BASE」  株価は高値から大幅下落も通期黒字化は目前?
第40回 ラーメンチェーン展開の「魁力屋」 成長期待はあるものの
第39回 軽量化金属部品の製造加工の「STG」 地味な業態だがきらりと光る会社
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております