[ザ・プロジェクト]
コスト削減にとどまらないFinOpsの効果、「スタディサプリ」データ基盤チームの実践─リクルート
2024年12月26日(木)森 英信(アンジー 代表取締役)
クラウドサービスの料金は従量課金モデルが主流だ。大手ベンダーは米ドル基準の課金なので、昨今の円安で日本のユーザーは相当な影響を受けることがある。利用状況や支出の管理が不十分だと、予想外のコスト増に直面してしまう。そんな中で注目されているのが「FinOps」──クラウドサービスのコストを正確に可視化して、ROIの最適化や財務上の説明責任の確立を図る手法だ。本稿では、リクルートのオンライン学習サービス/アプリケーション「スタディサプリ」の開発・提供基盤を支えるデータエンジニアリンググループに、FinOpsの取り組みと成果を聞いた。
ビジネス成長に伴い浮上した、クラウドコスト管理の課題
リクルートの「まなび領域」では、個々人が自分らしく学び、生きられる社会の実現を目指し、小学生から大学受験生まで向けのオンライン学習サービス「スタディサプリ」や英語学習アプリ「スタディサプリ ENGLISH」(画面1)など、学習や進路に関するさまざまな事業を展開している。
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スタディサプリをユーザーに提供する裏側では、データ基盤を担うチームが各種KPIデータのETL(抽出:Extract/変換:Transform/書き出し:Load)や品質管理を担当している。リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 データ推進室 販促領域データソリューション4ユニット まなびデータソリューション部 まなびデータエンジニアリンググループ(以下、まなびDEG)である。
システム基盤をIaaSのGoogle Cloudに置いて、さまざまなデータを「BigQuery」に連携・格納している。まなびDEGは、その開発と管理に加え、SQLクエリで日次集計する仕組みの構築を担当している。
以前は別のサービスを使ってデータ分析を行っていたが、2020年にBigQueryの利便性の高さから現在の環境へ移行している。まなびDEGの吉田駿哉氏(写真1)は、当時を次のように振り返る。
「導入当初は、コロナ禍でオンライン学習の需要が急増し、ビジネスが成長しているタイミングでした。そこで、BigQueryをデータドリブンな意思決定やモニタリングの基盤として活用することを目指しました。その後、モニタリング環境も成熟し、2024年にはBigQueryの全面的な活用に至っています」
スタディサプリの事業成長に伴い、まなびDEGが運用するデータ基盤の利用者は、データサイエンティストやアナリティクスエンジニア、マーケター、PM、エンジニアなど、まなびDEGを超えて幅広い職種に広がった。その結果、データやコストが膨れ上がり、管理の課題が顕在化していった。円安やBigQueryの料金改定などが重なり、まなびDEG単独の施策ではコスト最適化が限定的になる場面が出てきたという。
●Next:コスト意識の改革に向けて、FinOpsにどう取り組んだのか
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