Ogg Vorbis

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Ogg Vorbisオッグボルビスオッグボービス)は、Xiph.orgが開発したフリー音声ファイルフォーマット

Ogg Vorbis
拡張子.ogg .oga
MIMEタイプaudio/ogg
開発者Xiph.Org Foundation
種別オーディオコーデックコンテナフォーマット
包含先Ogg
国際標準Specification

概要

コンテナ形式OggコーデックはVorbis。Oggはコンテナ(入れ物)であり、いわばOggがVorbisを包んでいると考えることができる。

Ogg Vorbisとはコンテナとコーデックをセットにした呼称である。単にOggといった場合は、他にFLACを格納したOgg FLAC、speexを格納したOgg Speex、動画コーデックのTheoraを格納したOgg Theoraなどがある。VorbisはOgg用に開発されたコーデックなので当初はOgg専用だったが、のちにMatroskaが対応した。Matroskaに格納したVorbisはMatroska Vorbisであって、Ogg Vorbisではない。

拡張子は.ogg、まれに.oga。.oggはかつてのOgg共通の拡張子で、現在は公式には.ogxに変更されたため非推奨だが、Ogg VorbisとOgg Theoraのデファクト・スタンダードな拡張子として広く使われている。.ogaは、音声コーデックのみを格納したOgg共通の拡張子である。

広く使われているMP3などは特許の制限を受けるため、それらの代替として誰でも自由につかえる技術を提供することを目指して作られた。仕様はパブリックドメイン、核となるエンコード・デコードのリファレンスコードは修正版BSDライセンスフロントエンド・ツール類はGPLで提供されており、パテント(ライセンス料)フリー。

これらはXiph.orgによって規格化されている。OggコンテナフォーマットはRFCで正式に文書化されている。RFC3533

要項

仕様

アルゴリズム
MDCT(Modified Discrete Cosine Transform:修正離散コサイン変換
サンプリングレート
8kHz - 192kHz (Typical rate)
チャンネル数
1ch(mono), 2ch(stereo), 4ch, 5.1ch, 6.1ch(最大255ch)
ビットレート
平均32kbps(aoTuV Q-2 mode), 平均45kbps(Q-1)~平均500kbps(Q10) (44.1kHz ステレオソースの場合)
チャンネルカップリング
ステレオモード時のみ対応(それ以上のモードに対応したエンコーダが現状無い)
ビットレート制限
エンコーダに依存
MIME Type
application/ogg, application/x-ogg, application/x-vorbis
ストリーミング
対応(プレイヤー側の対応が必要)
チェックサム
対応(デフォルトで有効)
コピーガード
未対応
タグ情報
Vorbis Comment(UTF-8)(一般的なID3タグには未対応)
コンテナ対応
Ogg, Matroska, WAV(RIFF Ogg Vorbis, Vorbis ACM), Ogg Media, MKV(AVIは未対応)
ギャップレスデコード
対応(プレイヤー側の対応が必要)
ギャップレス再生
対応(プレイヤー側の対応が必要)

特徴

長所

Vorbisは全てのビットレート域で既存コーデック(MP3)を超えるべく設計されている。現状の実装では、同レートのMP3より音質が良く、AACと同列もしくはそれ以上とされる。標準ビットレートは112kbpsで、この時の音質は、多くの人がCDもしくは圧縮前の音源とほとんど聞き分けがつかないとされる。

圧縮率の指定は通常、クオリティレベルと呼ばれる数値で指定し、範囲は-1から10までの範囲である。44.1kHz Stereo(2ch)のソースの場合、標準はQ3(112kbps)となっており、最大ではQ10(500kbps)、最低のQ-1では48kbpsとなる(aoTuVエンコーダーではそれ以下のQ-2を指定でき、32kbpsでエンコードできる)。

かつてはエンコード速度の遅さが指摘されていたが、BlackswordによるOgg Vorbis 高速化プロジェクトにより大きく改善されている。音質の点では、拡張性の高さを生かして幾重にもチューニングを施した蒼弓のaoTuVが長きにわたって高い評価を勝ち得ており、オフィシャルエンコーダにも一部組み込まれた。Xiph.orgのVorbis開発の歩みがかなり緩やかになっている現状において、Vorbisが企業の開発するAAC等のコーデックに伍する品質を保つことができているのは、この両者の努力に負うところが大きい。[1]

Vorbisは標準でギャップレスデコードに対応している。ライブやダンスミュージック等といった、曲間のギャップが問題になるソースにおいて利点がある他、動画の音声として利用した場合でも映像と音声の同期ズレの原因とならない等の利点がある。Vorbisはプログラムからはサンプル単位で位置を指定して正確にデコードできるため、ライセンス料フリーであることもあって、パソコンゲームなどで多数採用されている実績がある。[2]

ちなみに、主要な音声非可逆圧縮で、ギャップレスデコードにフォーマットレベルで対応しているのはVorbisとATRACのみである。MP3とAACとMusepackはエンコーダーの独自拡張によってギャップレス情報を埋めこむことで擬似的に対応しているため、デコーダーも各独自拡張に対応している必要がある。ただし、Vorbisにおいても携帯プレイヤーなどではデコーダ側の実装問題でギャップレス再生できないことも多い。

短所

  • Vorbisは可変ビットレートが基本のため、AVIなどのVBR音声コーデックを想定していないコンテナでの使用は、音がずれるなどの問題が生じる場合があり、OGMコンテナ、Matroskaコンテナなどを使用する必要がある。
  • VorbisはMP3より複雑な処理をする必要があるため、オフィシャルエンコーダの速度は比較的遅い傾向にある。
    • Ogg Vorbis 高速化プロジェクトのライブラリを使用することで、環境によってはオフィシャルより2~3倍、又はそれ以上速くなる。[3]
    • ただし、現状のリファレンスエンコーダではABRエンコード(ビットレート指定エンコード)の際には、クオリティ指定エンコードの2倍以上の時間がかかる。これは、現状のABRエンコーディングの実装に由来するものである。
  • 対応プレイヤーが少ない
    • Vorbisに対応している携帯プレイヤーは現時点で韓国系のものがほとんどで、全体のシェアからすれば数は少なく、その点ではまだまだMP3や、大企業の後押しのあるWindows Media AudioAACに及ばない。ただし、Rockboxを対応している携帯プレイヤーに導入すれば、Vorbisを再生することは可能となる。
  • 純正のエンコードライブラリ以外を使うものには、音が割れたり、音量が小さくなってしまうものがある(音量は後で調整可能)。
  • デコードはMP3に比べ多くのメモリを必要とする(目安はWMA(多)とAAC(少)の中間)ため、メモリシステムが貧弱な環境ほど負荷が高くなりがちである。このことは現在のPCでは全く問題とならないが、携帯プレイヤーでは電池を多く消費してしまう原因となる。
  • Vorbisはパテントフリーを謳っているが、現存する特許を全て調査することは事実上不可能であることから、いわゆるサブマリン特許の類いが現れる可能性を100%完全に否定することはできないのではないか、といった声もある。

関連項目

Vorbisが再生できるプレーヤー

外部リンク

  1. ^ ただし、それはモノラルとステレオにおいての話であり、サラウンド(マルチチャンネル)に関してはその限りではない。
  2. ^ (参考)http://wiki.xiph.org/index.php/Games_that_use_Vorbis
  3. ^ (参考)Speed benchmark of audio encoders, http://nyaochi.sakura.ne.jp/encoder-benchmark/